中国ビジネスに冷水「アステラス社員拘束」の恐怖 投資誘致の一方で不透明な「スパイ容疑」を連発

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ベテラン駐在員の拘束を受け、北京の日本人社会には衝撃が広がっている。写真は人民大会堂の周辺を警戒する武装警察隊員(写真:Bloomberg)

日本企業の駐在員である50歳代の日本人男性が、北京で中国当局によって「反スパイ法」違反の容疑で拘束された。3月25日の報道を受け、同26日にはアステラス製薬が、この男性は同社の社員であることを認めた。アステラス製薬は中国で医薬品の生産と販売を行っており、北京と香港に事務所がある。

松野博一官房長官は27日午前の記者会見で、「今月、中国当局から在中国日本大使館に対して通報があった。日本政府として中国側に早期解放を強く求めている」と説明した。アステラス製薬は「外務省を通じて情報収集し、適切に対応していく」とコメントするにとどめた。

会社側は所属部署や経歴を明かしていないが、東洋経済の取材では、拘束された人物は香港や北京で長期間の駐在を経験した中国ビジネスのスペシャリストだ。これまで医薬原材料の輸出入、輸入医薬品の販売、工場の立ち上げ、販売体制構築、中国政府対策など、中国に関する幅広い分野で仕事をしてきた。

北京の日系企業で構成される中国日本商会の副会長や、同会のライフサイエンスグループのリーダーも務めた。新型コロナウイルスの感染対策やワクチンについても詳しく、頼りにされる存在だったようだ。 

現地の日本人社会に大きな衝撃

4年にわたる二度目の北京駐在を終え、今月に帰国して退職することが決まっていたという。まさに日本に帰る直前に拘束された模様だ。北京の日本企業社会では知られた人物だけに、その拘束に現地の日本人社会では衝撃が広がっている。「追い出すならまだしも、国に帰さないというのはさらにたちが悪いし、怖いと感じる」(日本企業の北京駐在員)。

中国外交部の報道官は3月27日の記者会見で、拘束された日本人男性の容疑が「反スパイ法」違反であることを明らかにした。中国では2014年に同法が制定されて以来、今回のアステラスの事案を含め少なくとも17人の日本人が中国当局に拘束されてきた。10年を超える実刑判決が下された事例も複数ある。

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