JR西、「瀬戸内海に浮かぶ町」三位一体で挑む再生 滞在型観光地としてポテンシャルが大きい

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内藤氏はワークショップの企画から運営までを担った重要人物の1人でもある。そんなワークショップでも、とりわけトピックとなったのが2021年にオープンした、高級旅館「Azumi Setoda(アズミ瀬戸田)」の存在だった。

国登録有形文化財指定の耕三寺への参道としてかつては賑わいを見せた「しおまち商店街」のすぐそばにある、明治期に建造された豪商邸宅「旧堀内邸」。それをラグジュアリーホテルブランド「アマン」の創設者がリノベーションして、新ブランド「Azumi」を冠した「Azumi Setoda」がオープンさせた。

これまでの瀬戸田のイメージにはない、ハイブランドな旅館とも言えるため、「当初は“黒船がやってくる”、そんなイメージもあった」と笑いながら話すのは、「しおまち商店街の輪」会長の山口広三氏。「しおまち商店街をどうにかしなければという思いはあったが、正直、方法がわからなかった。シャッターが閉まり続ける商店街を見て、島としての自信がなくなっていた頃でもある。そんな中、見たこともない高級な旅館がやってくると聞いた時、町が自分たちの知らない形になっていくのではという危機感もあったが、変わることができるチャンスとも感じていた」。

まずは「仲間に入れてもらう」

「Azumi Setoda」の開業に際し、地域の気持ちを蔑ろにした開発はありえない。そこで、しおまちとワークショップは規模の大小を問わず、3年に渡ってディスカッションを展開。ワークショップ1年目には、地域に根差したデベロッパーとしての役割を持つ、地域商社・まちづくり会社である「株式会社しおまち企画」を設立した。

山口氏が「“黒船”かも知れなかったAzumiに対し、地域がその存在を受け止められるようになったのは彼らも欠かせなかった」と話すのが、”しおまちブラザーズ”こと、鈴木慎一郎さんと小林亮大さん。東京から瀬戸田に移住した、株式会社しおまち企画の中心人物でもある。

「地域のみなさんとともに、瀬戸田の未来を考えるのが僕らの役割。事業の説明や堅苦しいことありきではなく、まずはちょっとダサくてキャチーなキャラクターを知ってもらい、仲間にぜひ入れてくださいという存在でした。だから基本的には、地域のみなさんからのお願いやお誘いは「YES」か「はい」で応えています」(ブラザーズの2人)。

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