JR西、「瀬戸内海に浮かぶ町」三位一体で挑む再生 滞在型観光地としてポテンシャルが大きい

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JR西日本は2022年12月より「地域共創モデルへの挑戦」を掲げており、1歩目の取り組みとして、瀬戸田町内に拠点を置く、宿泊・観光・飲食等を中心に地域創生に関する事業全般を行う、「株式会社しおまち企画」と業務提携契約を締結するとともに、同社の社債の引き受けを発表した。同社は調達した資金で空き家等をリノベーションし、店舗・宿泊施設開発を進める「SHOP HOUSE PROJECT(ショップ・ハウス・プロジェクト)」に活用する。

そもそも瀬戸田は直接的な自社線沿線とは言いがたい。海を挟んだ瀬戸田のまちづくりにJR西日本が参画するメリットはどこにあるのか。これは瀬戸田が観光地としてこれまで歩んできた1つの経歴と位置に起因している。

滞在型観光の拠点に

風光明媚かつサイクリングの名所として、国内はもとより海外からの訪問者が多い瀬戸田は、先述の通り、しまなみ海道の本線沿いではないものの、尾道やほかの島を周る定期航路が発着する瀬戸田港がある。「しまなみ街道をすべて自転車で走破しようとすると、約70kmもあり、かなりタフなルート。さらに“行った”ということは“帰ってくる”必要も出てくる。そこで尾道から出発し、瀬戸田―尾道間に就航する自転車積載に特化した船で折り返すか、瀬戸田に宿泊することで、しまなみ海道サイクリングのハードルが下がるだけでなく、瀬戸田を滞在型観光の拠点にできる」(内藤氏)。

海路、陸路が充実し、日本有数の回遊性を持つ瀬戸内エリアは、広域な一大観光地区とも言える。そして、その滞在型観光拠点として立地の恵まれた瀬戸田が、宿泊、飲食等の施設をはじめ、地域文化・歴史に根ざしたアクティビティの確立ができれば、地域活性化にもつながる。加えて、瀬戸内観光に訪れる観光客の多くがインバウンドで、かつ国内旅行者を含めて広島、大阪からの移動が多い。瀬戸内が魅力的な場所になることはJR西日本としても、即効性はなくとも中長期的に1つの意味を持ってくる。

「滞在型観光拠点としての瀬戸田のポテンシャル」と、“通過型観光地”になってしまった瀬戸田を「盛り上げたい」と考えた地元の思い。そんな地域、行政、企業が三位一体となり、目の前の今だけでなく、50年先の地域作りを見据えた、瀬戸田の未来を考える取り組み「しおまちとワークショップ」が2019年から始まった。

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