日本の野菜種子は、なぜ海外でウケるのか サカタのタネが170カ国以上で売れる秘密

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農家を悩ませる病気にも強い大玉トマト「麗旬」
農家が作り、誰もが口にする野菜。ではその作物の元になる種はどこから来るのか。現在流通する野菜の多くは、種苗会社が生産した種から作られている。そんな種苗業界の国内トップ企業「サカタのタネ」(横浜市)。現在海外を中心に売り上げを伸ばし、全体の売上高について占める比率は5割に迫っている。なぜ種苗という産業が必要なのか。日本の種が外国で売れる理由や、サカタの強みについて、坂田宏社長に聞いた。

――海外での売り上げが全体の約5割にもなる。なぜ日本の種が世界で売れるのか。

まず日本の厳しい自然環境が関係している。梅雨、台風、温度格差、多湿に伴う病気など様々なリスクが日本にはある。こういう厳しい条件下で選ばれたものは、いろいろな場所に適応可能なので、日本の種は海外でも通用する。特に伸びているのは中国やインドといった新興国だ。人口が増えているので野菜摂取量も多くなる。

食の西洋化も、中国向けが伸びている一つの要因だ。もともと中国にはいろいろな野菜があるが、ブロッコリーやカリフラワーなど、これまであまり食べる機会がなかった野菜も食べるようになった。さらにブロッコリーはガン予防に効くという発表もあり、消費が伸びている。

研究開発には10年以上かける

また、いかに現地のニーズに合わせられるかも重要だ。いい例がトマト。日本のトマトはピンク系だが、海外は赤が主流。各国で栽培方法も土壌も、かかる病気も違う。消費者の立場からいうと、酸度と糖度のバランスや、見た目に対する要求が違う。

こうした需要をくみ取るため、海外拠点のトップは現地の人にやってもらっている。そうとう調査したうえで、研究開発には10~15年かける。こうして他社にはないものを作るのがうちの強み。開発に必要な遺伝子の情報、つまり種は何万と所有している。適したものがなければ、素材集めから始める。

――生産者は自分で作った種を使えばいいのでは。なぜわざわざ買う必要があるのか。

私どもが売っているのはF1という特定の性質を持つ親から生産した種子。色や形、サイズ、収穫量など様々な点で親より優れている。

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