日本の野菜種子は、なぜ海外でウケるのか サカタのタネが170カ国以上で売れる秘密

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さかた・ひろし 1952年生まれ。第一勧業銀行(現みずほ銀行)を経て、1981年に入社。2007年から社長。創業者の孫でもある(撮影:尾形文繁)

F1は生産者に非常にメリットがある。従来からその地に根付いている固定種と比べても、収穫量が多い。生育も旺盛で、ストレスや病気に強い。しかも成長スピードが速く、形が均一にそろうので一斉に収穫でき、人件費削減にもつながる。畑も効率よく使える。(F1から採る種は、遺伝の法則により性質が異なるため)毎年種を買うのは確かにコストかもしれない。だが、それを補って余りある利益が生産者には期待できる。

そもそも種採りは大変な作業。たとえばキャベツだと、作物ができて花が咲き、サヤができて種が採れるまで、収穫までの倍くらいの時間がかかる。そういう意味でも農家は種を買ったほうが効率的だ。日本で種苗が発展したのは、コツコツと取り組み、勤勉で我慢強く、手先も器用といった国民性も影響していると思う。

販売先は170カ国を超える

ーー拠点に対する考えは?

当社は日本以外に19カ国に26の拠点があり、販売先は170カ国以上に及ぶ。種子の生産拠点は海外にも設けている。種子生産はもともと日本でやっていたが、日本の気候は必ずしも恵まれていない。種子は安定供給が必須。種がないと農業が始まらない。そこで適地適作を行うため、米国から海外展開をスタートした。また、季節が逆である北半球と南半球に生産拠点をばらすことで、リスク分散にもなる。

なお、当社が国内で販売している種子の90%以上は海外生産。ただ、品種はメイド・イン・ジャパン。海外の畑を借りて種を取っているということだ。

現在、グループ全体で2000人以上の従業員がいる。そのうち3分の2以上は海外の人員。また、全体の2割は研究開発に携わっている。これは非常に高い比率で、うちの強みでもある。

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