震災「復旧」や「復興」を超えるビジョン「創新」が必要だ--後藤新平、カリフォルニア州サンタクルーズに学ぶ
このように、住民自らが参加して復興ビジョンを描くことで、家族の絆、近所での支え合い、ボランティアなど地域の互助が進み、国や地方政府に頼るだけではなく、地域コミュニティが本当の意味で自立・自律できる仕組みを作れるのではないか。
もともと医者であった後藤新平も、社会を生物の体に見立て、「人と人とのつながりがうまく機能することで世の中が発展する」という独特の思想を抱いていたという。まさに、後藤新平が1世紀前に考えた人と人のつながりを再生し、新しく創りだすことが「創新」なのだ(参考:NHKその時歴史が動いた「後藤新平・帝都復興の時」)。
「志民」運動を進める
繰り返しになるが、「創新」に際し、1番必要なものは地域住民の考え方の変革である。単に税金を納めて地方政府や国にサービスやおカネを要求する市民ではなく、地域の活性化のために具体的なビジョン提案をし、行動し、実現する“志民”(高い志を持った市民)がいなければ「創新」というイノベーションは進められない。
それぞれの地域の抱える諸問題--少子高齢化への対応、医療・介護問題、エネルギー問題(省エネ・新エネ)、ゴミ問題、貧困問題--を解決する責任は、まずその地域の住民自身であるということを、私たちは再認識したい。地域の歴史や特性、人材や企業の創意、民間の持つ資金などをいかに効果的に活用できるかが問われることになる。「志民」による地域生活・地域社会における「創新」を実現すれば、日本の社会や経済も活性化されるだろう。そして、国はその「創新」をしっかりとサポートするべきである。
「祖国があなたに何をしてくれるかを尋ねてはなりません、あなたが祖国の為に何ができるかを考えてほしい」--1961年にケネディ大統領が言ったことを日本でも推し進めるときが来たのである。
「復旧でなく復興」、後藤新平の関東大震災復興策
さて、東日本大震災が起きた直後、復興のために(全国比例区選出の)参議院議員としてなすべきことを考えた。そして、すぐに現地の被害者救済に加わることよりも、地域の復興ビジョンとそのために必要な法律を早急に作ることであるとの結論に達し、すぐさま古今東西の災害復旧等の事例を調べた。
その結果、今回の震災は阪神・淡路大震災(1995年)の復興も参考となるが、もう一世紀近く昔の関東大震災(1923年)の復興も大いに参考になることがわかった。