7歳彼が離婚後2人とも再婚の両親を見て悟った事 小説『やさしさを忘れぬうちに』第1話全公開(3)

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葵の発言に呼応するように西垣が背筋を伸ばした。桐山少年は葵が言ったことの意味を捉えきれずに、二人の顔を交互に覗き込んだ。

「それって」

まず、桐山少年の脳裏に浮かんだのは父である健二の顔だった。頭の中で葵の横に立つ健二が西垣と入れ替わる。そこから導き出された答えを口にする。

「結婚するってこと?」

「そうね。一緒に住みたいと思ってる」

頭の中で、桐山少年と葵と西垣が、一つの家の中に入る。頭の中の健二は、一人ポツンと外
に追いやられる。

「お父さんはどうなるの?」

「そのことなんだけど……」

葵は桐山少年に、こう告げた。

健二と葵が別れたのは、お互いの性格が合わなかったことも大きな原因だったが、お互いに気になる人がいたことも原因の一つだった。健二と葵はよくよく話し合ってお互いのために別れることにした。でも、健二も葵も桐山少年と一緒に暮らしたいと思っている。だから、新しいお父さんと一か月暮らしてみた後、新しいお母さんとも一か月暮らしてみてほしい。その上で、健二と暮らすのか、葵と暮らすのかを決めてほしい、と。

「うん。わかった」

桐山少年は、それから一か月、葵と西垣と生活をともにした。

その次の日、今度は健二が連れて来た、見知らぬ女性と会うことになった。その日は日曜日で、健二が新しい車で迎えに来た。

健二に連れられて向かった先は、小さなケーキ屋さんだった。ショーケースに並ぶ、色とりどりのケーキたち。そのケーキを作っているのが今お付き合いしている人だと、健二に紹介された。名は木村楓。葵と比べると、背が一回り小さい。年は健二と一緒だと言ったが、少女のように幼く見える。

ユウキと一緒に歩いたら、姉弟に見られるかもな、と健二は笑った。

「君が泣いちゃダメだって誰が言ったの? お父さんとお母さんは、君の気持ちよりも自分達の都合を優先したんだよ。君が泣くのは当然だよ。君は悪くない。なんで君が泣いたことを後悔しなくちゃいけないの?」

桐山少年の話を聞いていた二美子は、目を真っ赤にして声を荒らげた。

「僕、わかったことがあるんだ」

「ありがとう、お姉ちゃん」

涙を流す二美子を見て、桐山少年はにっこりほほえんだ。

「でも、僕、ディズニーランドでお願いしたんだ。お父さんとお母さんが幸せになりますように、って」

「え?」

「僕、西垣さんや楓ちゃんと暮らしてみてわかったことがあるんだ」

「暮らしてみてわかったこと? え? なに?」

二美子は眉をひそめる。

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