経産省の狙いは「原発比率を下げないこと」 公約に反し、原子力の比率を高めに誘導

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3.11の福島の原発事故の直後には、官民挙げて省エネに取り組んだ(撮影:梅谷秀司)

再エネのコストの考え方にも問題がある

"九電ショック"とも呼ばれた昨年の太陽光発電の接続保留問題を機に、国内では再エネの接続可能量が検討された。だが、「再エネの受け入れに技術的上限はないというのが国際的な共通認識。接続可能量などと言うのは日本の再エネ導入技術の敗北を意味する」と、関西大学システム理工学部の安田陽准教授は指摘する。

また、再エネのコストを議論する際には、地域間連係線など送電線の増強費用が再エネのコスト高要因として問題視されている。だが、発送電分離を基本とする電力システム改革の基本的考え方に立てば、系統増強費用を再エネ固有のコストに含めることは不適切とも考えられる。

固定価格買い取り制度(FIT)の賦課金による電気料金の高騰がことさらに強調されるが、再エネの普及とコスト削減の好循環を通じ、長期的には賦課金が下がり、国民負担も収束していく。FITが“将来世代への貯金”とも言われるゆえんだ。経産省はそうした将来見通しのシミュレーションを出す必要があるだろう。そうすれば国民のFITに対する見方が変わる可能性がある。

さらに、温暖化ガス対策としても重要なのは省エネの拡大だ。技術革新やムダ削減などを通じて省エネを拡大することで、エネルギーミックスの分母となる総発電量が減る。ゼロエミッションである再エネの比率向上にもつながる。自然エネルギー財団では、2030年度までに10年度比で30%の電力消費削減が可能と試算している。「省エネやエネルギー効率化は最も安価でクリーンな燃料」であるとの再認識が必要であり、今後の小委の議論でどこまで踏み込めるかが問われる。

中村 稔 東洋経済 編集委員
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