経産省の狙いは「原発比率を下げないこと」 公約に反し、原子力の比率を高めに誘導
再エネ比率にしても、第4回会合で経産省が示した導入見込み量で考えると20~25%程度となる。つまり原発比率を下回る可能性がある。橘川氏ら一部の委員は再エネ比率30%以上(原発比率は15%以下)を主張するが、経産省主導で原発推進寄りに偏った小委メンバーの中では多数意見とは言えない。「どうしても原子力の比率を上げたいという雰囲気が伝わってくる」(橘川氏)のはそのためだ。
しかし、原発比率の高いフランスを含め、欧州主要国が2030年の再エネ比率の目標を軒並み40%以上に置いている中、日本の目標が20~25%ではあまりに見劣りする。「再エネの最大限導入」を標榜する政府の本気度が疑われる水準と言えるだろう。
原子力のメリットばかり主張しリスクを明記せず
そもそも、経産省が議論の前提とする、各電源の特性や位置づけ自体に多くの疑問がある。
経産省の資料では、原子力は「低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置づけている。エネルギー政策の基本的視点とされる「3E+S」(3Eは安定供給、経済効率性、環境適合、Sは安全性)の3Eにおいて、非常に高く評価した表現となっている。
しかし、原発はひとたび災害や事故が発生すると、現状がそうであるように、出力が一定どころか、急速に低下し、長期停止してしまう。「優れた安定供給性」には強い疑問がある。委員の高村ゆかり・名古屋大学大学院環境学研究科教授は、そうしたリスクを原子力の運転特性として明記すべきと事務局に要求した。
原子力はいったん事故が起きれば、国民の生命をも危険にさらすリスクがある。これは東京電力福島第一原発事故という歴史的事実に基づくことであり、「他の電源とは異なる最も大きな特徴」(委員の河野康子・全国消費者団体連絡会事務局長)である。放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分もまったく先が見えない状況で、原発敷地内での中間貯蔵にも限界があり、危険性がつきまとう。
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