親族もそんな布施川さんの意思を尊重します。年額で100万円以上かかる河合塾に、祖母からお金を借りたり、父母が借金したりして通わせてくれることになりました。「両親や祖母に頭が上がりません」と布施川さんは感謝の念を表します。
それでも、定期代金や参考書代・昼ごはん代までには手が回らず、浪人をしていくためには、自分も最低限の金銭を稼ぐ必要がありました。そのため布施川さんは、週3回・8時間程度のアルバイトをしながら予備校に通っていたそうです。
「9時から17時までドラッグストアの店員をして、夜に予備校に行って3時間程度勉強する日々が続きました。アルバイトのない日は朝から予備校に行って勉強して、21時まで勉強していました」
12月までアルバイトを続けながら勉強を続けていた布施川さん。それに加えて、抗がん剤の副作用で歩けない母親の通院の手助けをしていた時期もあったようです。
最低合格点から0.8点差で掴んだ合格
しかし、なぜそこまでして東大を目指そうと思ったのでしょうか。
「家が貧乏なので、お金持ちになりたかったからです。だから、東大に行けなければ将来がないと思ってやっていました」
すべては東大に合格するため……。プライドを捨てて合格に向かう姿勢は、現役の時との意識の変化からも感じられました。
「浪人生は無職です。僕は自分が”無職である”ということを常に考えていました。若い時の1年を世話してもらって勉強に使っている身分なのに、大学に受からないのは本当に親不孝だと思っていました。だから、僕は予備校で友達を1人も作っていませんし、予備校で話す時は先生に質問しに行くだけと決めていました。これくらい自分に厳しくしないと受からない、そう思って1年必死に取り組みました」
こうして勉強に捧げた1年の成果は模試の判定にも表れます。E判定だらけだった前年度より上がり、C~Bと安定したそうです。「自分のやり方が間違っていないんだ」と確信した布施川さんは、自信を深めて試験本番に臨みます。
こうして布施川さんは、東京大学文科III類に合格しました。最低合格点とはわずか0.8点差と、あと1問落としていたら不合格という執念で掴み取った合格でした。
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