ダルビッシュの言葉の魔球が球界を変革する理由 キレもクセもある最上級の言葉が持つすごみ

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また、ジャーナリスト・安田純平が内戦状態のシリアに潜入し、現地の武装勢力に3年4カ月拘束されたのち2018年10月に解放された事件に際して、安田氏に対する「自己責任」論からの批判が渦巻く中、ダルビッシュはこう反論した。

ジャーナリストが現地に行くことで助かる人たちが増えるし場合によっては他国の介入で戦争が終わる可能性もあるわけです。ただ場所によってはジャーナリストも拘束、殺害されるリスクがあるわけで今回はそのリスクに当たってしまっただけの話。非難はできない(2018年10月26日ツイート)

野球界に話を戻すと、侍ジャパンの若手選手にダルビッシュからいちばん伝えてほしいのは、ずばり「練習観」だ。

知的で合理的で、つまりは昭和野球のマッチョな練習観と対極をなす練習観。以下の2つの言葉を、すべての高校野球部の部室に貼りたいと心から思う。

練習は嘘をつかないって言葉があるけど、頭を使って練習しないと普通に嘘つくよ(2010年6月11日ツイート)
野球は考えれば考えるほど、楽しく簡単になる(『ダルビッシュ有の変化球バイブル』ベースボール・マガジン社)

片や、張本勲は「今も素質のある選手は大勢いるけど、練習量が圧倒的に足りない。ダルビッシュはたいしたものだが、稲尾さんや金田さんに比べたらどうだ?」(Number/2011年6月23日号)と言う。

しかし、ダルビッシュの知的で合理的な練習観を見るにつけ私は、稲尾和久と同時期に同じチームで戦いながら、『週刊ベースボール』の連載(2011年9月5日号)にこう記した豊田泰光のほうを信頼したくなる――「日本のプロ野球の歴史が生んだ最高の結晶のひと粒、ダルビッシュ」。

ダルビッシュの言葉は「魔球」

以上見てきたように、ダルビッシュの言葉はキレもクセもある、いわば魔球だ。そんな魔球に魅了された侍ジャパンの選手たちが自分の言葉を持ち、それがまた、自チームの周囲の選手たちに広がっていくことを期待したいのだ。

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ダルビッシュのような言葉を、多くのプロ野球選手が持ち始めたとき、日本の野球界は変わる。大きく変わる――。

最後に、ダルビッシュが札幌ドームでメジャー移籍会見をした翌日(2012年1月25日)に自らのブログに記した言葉。彼の言葉の本質は、優しさだ。

あなた達が選手を愛すようにファイターズの選手もあなた達を愛しています。あなた達が想像する何十倍もです。どんなことがあっても支えてあげてください。打てなくても、抑えられなくても、いつもの温かい言葉と拍手を送ってあげてください。
スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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