ダルビッシュの言葉の魔球が球界を変革する理由 キレもクセもある最上級の言葉が持つすごみ

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主に高校野球のトーナメント制に端を発して、目の前の試合を「絶対に負けられない戦い」と捉えてしまう窮屈な野球観、スポーツ観に対して、ダルビッシュはNOを突き付ける。

「絶対に負けられない」などと観る側が盛り上がるのは勝手だが、その結果として、プレーする側の選手が妙なプレッシャーを感じてほしくないと思う。その意味で、キャプテン的立場のダルビッシュによるこの発言は、たいへん有意義だったと思うのだ。

ダルビッシュの剛速球ツイートの数々

また、高校球界に対して、ダルビッシュはかねて警鐘を鳴らし続けている。記憶に新しいのはTBS『サンデーモーニング』における張本勲のコメントへの反論だ。

2019年夏の高校野球岩手大会の決勝で、花巻東と対戦した大船渡が、エース佐々木朗希(現マリーンズ)を起用せずに敗れたとき、張本勲が同番組で「最近のスポーツ界で私はこれが一番残念だと思いましたよ」と発言したことについて(以下、ツイッターの引用は改行削除)。

シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナー(註:張本勲が出演する同番組のスポーツコーナー)を消してくださいと言う(2019年7月28日ツイート)

このダルビッシュの意見に対して、サッカーの長友佑都も加勢する。

この記事(註:張本勲の番組発言を報じたもの)が真実だとしたら非常に残念。苦境に立たせて大怪我をしたらマイナスでしかない。野球で生きていく選手なら尚更。監督は批判覚悟で選手の将来を守った英断。何度も言うが日程を選手ファーストで考えてほしい(2019年7月28日ツイート)

実はこれらツイートの前日から、ダルビッシュは高校球界に対しての剛速球ツイートを投げ込んでいた。これらの意見に対する賛否はあるかもしれないが、それ以前に、これら剛速球の明快さ、すがすがしさに驚くのだ。

主役は球児。誰も感動したい人たちのために甲子園目指してないですからね(2019年7月27日ツイート)
炎天下の中一生懸命頑張る球児達の身体は無視して自分だけ感動したいドS勢以外のまともな人たちと球児達のことを一生懸命考えた結果です(2019年7月27日ツイート)
あと開会式もやめよ。誰が暑い中入場行進して、知らんおっちゃんの長い話聞きたいねん。それかスカイプ開会式(2019年7月26日ツイート)

加えて、ダルビッシュの視線は野球界以外にも向けられる。注目すべきは、現代日本を覆う同調圧力や忖度に対する抵抗感だ。「黒人差別問題に抗議するため、女子テニスの大坂なおみ選手が大会を一時辞退して、アスリートとして発信したことについて」という質問に対しての回答。

日本人は多いですよね。他人に対して『こうするべきだ』とか、僕の髪だって『なんで髪切らないんだ』と。そこが僕には分からないです。とにかく人を自分の型にはめて、自分の型から出るものに対して批判する。本当にそういう人たちは分からないです(Number/2020年11月19日号)
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