中国経済「5%成長」担う新首相の軽すぎる存在感 李克強と李強、1字違いの新旧首相に大きな差
李克強首相は全人代での政府活動報告の中で、自らが進めてきた行政手続き簡素化、起業促進の成果に言及した。
「デジタル化により、行政サービスの90%以上はネット上で行えるようになった」「昨年末の企業数は5200万、自営業者の数は1.1億にのぼり、(合計した)市場主体の数は10年前の3倍に増えた」といった事例の紹介を通じて、挫折したリコノミクスの正当性をあらためて訴えているかのようだ。
存在感の軽い李強新首相
その李克強氏に比べても、新首相となる李強氏の存在感は軽いものになりそうだ。中国ではこれまで、首相に登用される人物には副首相の経験があることが不文律となってきた。しかし李強氏には副首相どころか中央で勤務した経験すらない。10年前までは浙江省の地方幹部にすぎなかった。
それが現在の地位に上り詰めたのは、ひとえに習主席との縁によるものだ。2000年代に浙江省党書記だった時代の習主席に秘書長として仕え、見いだされた。習政権の発足と同時に猛烈なスピードで昇進を重ね、2013年には浙江省の省長(党書記に次ぐナンバー2)に大出世。2016年には江蘇省の党書記に栄転した。2017年には党中央政治局員となり、かつて習主席が務めた上海市党書記に就任している。
上海市党書記在任中には上海証券取引所への新市場や、アメリカの電気自動車メーカー・テスラの工場を誘致するなどの実績を残している。
しかし、地方経済を活性化する手腕と、世界第2位の経済大国のマクロ政策を仕切る力量とは別物だ。李克強氏にしても、中央官庁の制御にかなり手を焼いた時期があった。2015年には「部長(大臣)たちの会議で決めたことに処長(日本の官庁では課長に相当)が注文をつけるのはおかしい」と発言したことがある。
官僚がトップの力量、本気度を見定めないと動かないのは日本も中国も変わらない。李強氏は、李克強氏と違って副首相の経験も積まずに、こうした難敵に立ち向かうことになる。
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