中国経済「5%成長」担う新首相の軽すぎる存在感 李克強と李強、1字違いの新旧首相に大きな差

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経済の失速に加えてゼロコロナ政策への抗議活動が続発し、中国政府は昨年12月に感染防止の措置をいきなり撤廃。一気に経済活動正常化に舵を切った。

春節(旧正月)をはさんだ大移動シーズンの延べ旅客数は16億人(前年比5割増)に上ったものの、新たな感染爆発は報告されていない。大きな混乱なく「ウィズコロナ」に転換したことを受け、国際通貨基金(IMF)は1月30日に中国の2023年の成長率予想を4.4%から5.2%に引き上げた。

足元では景気の先行きを示す2月の製造業PMI(購買担当者指数)が52.6と、1月の50.1から大幅に改善した。50が景況改善・悪化の分岐点で、2月の数字は2012年4月以来の高水準だ。

ほかにも景気の好転を示す指標が出始めている。この流れを続けて「5.0%前後」の成長を確実にするために中国政府は財政出動の規模も拡大する。財政赤字の対GDP比率を2022年の2.8%から今年は3.0%に引き上げる。

強く意識しているのは雇用の確保だ。2022年7月に都市部若年層(16~24歳)の失業率は19.9%に達し、その後も高止まりしている。李克強首相は政府活動報告で「青年、特に大学卒業生の就業促進をより際立った位置に置く」と述べ、若者の雇用対策への危機意識をにじませた。

今年は都市部で2022年並みの1200万人前後の新規雇用を創出することを目標としている。2022年は大学卒業予定者が1076万人に達し、はじめて1000万人の大台に乗った。2023年の卒業予定者はさらに82万人増え1158万人の見通しだ。

習体制下で変化した首相の権限

今回のバトンタッチがいつにも増して注目されるのは、今後の経済政策の司令塔を誰が担うのかが見通せないからだ。胡錦濤政権までは、共産党トップである総書記が政治を、国務院を率いる首相が経済を担当するというすみわけがあった。

習近平政権でも当初は李克強首相による市場原理重視の経済政策が「リコノミクス」と称され注目されたが、やがて習主席直轄の小組(タスクフォース)が続々と設けられて政策の主導権は奪われた。そして習主席の一極体制のもとで、国有企業の育成を重視する社会主義的な色彩の強い経済運営が定着した。

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