数分で完売「カフェタナカのクッキー缶」の正体 名古屋で1963年創業の喫茶店がカフェに転身

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「カフェタナカ」のシェフパティシエ、田中千尋さん(筆者撮影)

田中さんが「RÉGAL DE CHIHIRO」を立ち上げたのは、2010年。時代とともに店を訪れる客から日持ちのするお菓子を求められている中でのことだった。

「たまたま、かっぱ橋の道具街で可愛らしい缶を見つけたんです。手作りで温かみがあって、これに私の大好きなクッキーを詰めてみたいと思ったのがきっかけです。量産するつもりはなかったので、月に400缶をネット限定で販売しました」と、田中さん。

2010年には「エモい」、「映える」というフレーズもなかった。今、「RÉGAL DE CHIHIRO」のクッキー缶を眺めてみると、エモくて、映える。田中さんに先見性があったとか、周到なマーケティングによって生まれたわけではない。「RÉGAL DE CHIHIRO」の人気の背景には、母体である「カフェタナカ」の歴史と、田中さんのパティシエ人生があったのだ。

タナカコーヒーからカフェタナカへ

「カフェタナカ」の創業は1963年。父親である田中寿夫氏が当時はまだ珍しかった自家焙煎コーヒーの専門店としてオープンさせた「タナカコーヒー」が前身である。現在の店とは違い、客は男性が中心で相席は当たり前。客たちが吸うタバコの煙で店の奥が見えないこともあったという。

1963年、「タナカコーヒー」開店時の様子(写真:カフェタナカ提供)

「幼い頃からコーヒーは身近にありました。まだコーヒーが飲めなかったから、バタートーストをコーヒーに浸して食べていました。

学生になると、朝学校へ行く前に店を手伝っていました。当時はコーヒーのおつまみにピーナツを付けていたんですね。子ども心にピーナツではないなって思っていました。それが原点かもしれません」(田中さん)

田中さんの高校時代、名古屋・栄の三越に「ポン・デザール」というフランス菓子店がオープンする。従来の洋菓子とは一線を画した味と見た目の美しさに惹かれて、いつまでもショーケースに並ぶお菓子を眺めていたという。そして、自分の将来について「父のコーヒーに合うフランス菓子を作りたい」と考えるようになった。

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