奈良県知事選で大ピンチ、高市氏に吹く逆風の正体 維新に敗北なら初の女性首相候補「失格」の声も

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ただ、高市氏の思いとは裏腹に、「事態は自民党内の権力闘争が絡む闇試合の様相」(自民長老)ともなりつつある。調停役の森山選対委員長は荒井氏が親しい二階氏の側近で、党総裁の岸田文雄首相も「森山氏任せの傍観者」を装っているからだ。

高市氏は岸田政権発足時には党3役の一角の政調会長(2度目)に就任、その後、岸田内閣の主要閣僚の1つでもある経済安保担当相に転じた。ただ、昨年末に岸田首相が打ち出した「防衛増税」に反対して、「罷免されるなら仕方がない」と発言、物議をかもしたばかり。

だからこそ、自民党内の口さがない向きは「岸田首相はあえて放置して、維新が勝ってもすべて高市氏に責任を押し付けようとしている」(閣僚経験者)と指摘する。「もしそうなれば、党内保守派のマドンナの高市氏を、次の人事で要職から外す理由にもなる」(同)というわけだ。

維新候補が勝つと「一巻の終わり」

2021年9月の自民総裁選に安倍氏の手厚い支援で出馬、党内保守派の支持などで善戦した高市氏は、ことあるごとにネット上で「高市コール」が巻き起こる存在でもある。当然、次期総裁選出馬の意欲もにじませるが、岸田首相による「閣内取り込み」で、このところ政局的動きは封じられてきたのが実態だ。

もともと「無派閥で支持議員も限られる」(自民長老)高市氏だけに、最大の後見人だった安倍氏の死去後は、「自民党のおひとり様」(岸田派若手)と揶揄する声も。それだけに、「今回知事選で自民一本化に失敗し、維新に名を成さしめれば、首相候補としては一巻の終わり」(同)となるのは避けられそうもない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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