「大丸別荘」社長の釈明に見えたヤバい会社の内幕 「会社の常識、社会の非常識」の典型的なケース
レジオネラ属菌とは、自然界(河川、湖水、温泉や土壌など)に生息している細菌で、感染するとレジオネラ症を引き起こします。レジオネラ属菌は現在までにおよそ60種類が知られており、その中でも、レジオネラ・ニューモフィラは、レジオネラ肺炎を引き起こす代表的なレジオネラ属菌の1種とされています。
レジオネラ症は最悪の場合、死に至る病です。こうした社長の「非常識」な指示に抵抗する社員はいなかったのでしょうか。会見によると、やはり疑問を持った従業員もいたようです。報道によると、2019年12月に社長がお湯の入れ替えと塩素注入をやらなくていいと指示した時のスタッフの反応についての質問に、山田社長は「入れたほうがいいという人もいた」と話しました。
しかし、大丸別荘がこうした従業員の声を聞き入れることはありませんでした。「社会常識」に沿った従業員の訴えよりも「会社の最高権力者」である社長の間違った思い込みや、「塩素ぎらい」の感情を優先したわけです。この結果、この旅館は客の健康を害しかねない条例違反を続けてしまいました。
法令違反が常態化すると疑問を感じなくなる?
「会社の常識、社会の非常識」という言葉があります。会社の中で常識とされていることが、一般的な社会常識と違うケースはしばしばあります。それは、「社内でスリッパを履く」「社内だけで通用する専門用語を使う」といったささいなことから、「組織ぐるみの法令違反」といった重大なものまでさまざまです。
終身雇用が基本だった日本の場合、企業は仕事の場としてだけではなく一種のコミュニティーになっているケースがあります。「ムラ社会」とも呼ばれる企業内では、「社会の常識」とは違う「会社の常識」がつくられやすくなり、従業員はそれに逆らうことが難しくなります。
こうした社内外の常識のギャップが高じて起きてしまった「組織ぐるみ」の企業不祥事は、今回が必ずしも初めてではありません。鉄鋼大手のアルミ・銅製品の性能データの改ざん問題では、同社の国内工場で数十年前から不正が続いてきたと報じられました。不正のやり方が事実上「裏マニュアル」化されていて、担当者が代わるたびに不正行為が引き継がれていたとされます。
大手食品メーカーがBSE(牛海綿状脳症)関連対策の1つである国産牛肉買い上げ制度を悪用し、外国産の牛肉等を国産牛肉と偽って、これを買い取らせたという事件もありました。こちらも組織ぐるみの偽装工作だったとされています。
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