世界のサプライチェーン(供給網)は、途絶した時のスピードとほぼ同じペースで修復が進んでいるが、これはインフレに働く圧力が同じ速度で消滅することを意味しない。
アジアから米西海岸に向かうコンテナ船のスポット運賃は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時に15倍余り急騰した後、米中貿易が冷え込む中でコロナ以前の水準に戻った。
だが運賃上昇圧力が一様に緩和されているわけではない。フレイトスのデータによれば、欧州から米東海岸に向かうコンテナ船の短期運賃は、2019年後半の倍以上の水準にとどまっている。
さらに巨大船に積み込まれ鉄製のコンテナボックスで輸送される物品のうち、推定70%はスポット運賃でなく長期契約に基づいており、はるかに高いレートで21年と22年に再契約が行われた。大手メーカーや小売業者にとって、さらなる価格の引き下げを正当化できるほど、海上運賃はまだ十分下がっていないかもしれない。
ミシガン州立大学のジェイソン・ミラー准教授(サプライチェーンマネジメント)は「コンテナ貨物のスポット運賃下落には注意が必要だ。大部分の貨物が引き続きコロナ以前よりはるかに高い運賃契約の下で運搬されている」と指摘した。
そのような定着性は、一部地域のインフレ率が頑強に高止まりする理由の説明に役立つかもしれない。米生産者物価指数(PPI)は昨年12月に前月比で低下したが、1月には再び上昇に転じた。米連邦準備制度が選好するインフレ指標、1月の個人消費支出(PCE)価格指数も前年同月比5.4%上昇し、予想を上回る伸びとなった。ユーロ圏の1月の消費者物価指数は、変動の大きい食料品やエネルギーを除くコア指数の上昇率(改定値)が前年同月比5.3%と、過去最高を記録した。
インフレトレンドのサプライチェーンへの浸透にかかる時間は過小評価される傾向がある。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのサプライチェーン調査責任者クリス・ロジャーズ氏によれば、年2、3回よりも頻繁な価格設定変更を企業が好まないことも理由の一つだ。
ロジャーズ氏は「基調的価格が下落しても、浸透にかなり長い時間がかかることはあり得る。インフレの影響は製品価格に今も一部表れており、価格への反映に年内の多くの時間を要する可能性がある」と分析した。
関連記事
- 米PCE価格指数、予想上回る伸び-利上げ継続への圧力増す
- 米生産者物価指数、予想上回る前月比0.7%上昇-6月以来の大幅
- 米生産者物価指数、12月はパンデミックが始まって以来の大幅低下
- ユーロ圏コアインフレ率、過去最高5.3%-1月改定値で上方修正
原題:Supply Chains Have Healed But the Mark on Inflation Will Endure(抜粋)
(専門家の分析を追加して更新します)
More stories like this are available on bloomberg.com
著者:Laura Curtis
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら