旧天北線、鉄道廃止イコール「地域の衰退」なのか 最北の特定地方交通線、浜頓別―南稚内間の今

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小石―曲渕間は鉄道の営業キロで17.7kmも離れており、かつ猿払村、稚内市の境を成す峠で分断されていた。そのため旅客流動はほとんどなかった。

猿払村のデマンド交通と宗谷バス
鬼志別ターミナル前に並ぶ猿払村のデマンド交通と宗谷バス(筆者撮影)

その事情を鑑みて、宗谷バスの廃止後、猿払村内に当たる鬼志別―小石間は予約制のデマンド自動車に変更。現在も4往復が確保されている。

一方、稚内駅前ターミナル―声問―曲渕間は、稚内市が宗谷バスへ運行を委託する路線バス曲渕線となったが、これも利用客減少により廃止。2020年4月1日より予約制の乗合タクシー(4.5往復)に変更された。

現状、小石―曲渕間は高齢の村民向けの福祉タクシーが、墓参の際に利用できるだけになっており、公共交通機関による移動は事実上、不可能になっている。

宗谷岬経由で代替バスが存続

天北宗谷岬線自体も、利用客数が基準を満たさなくなったため国からの補助金が打ち切られ、2019年10月1日に鬼志別ターミナル―稚内駅前ターミナル間の便が7往復から4往復に削減された。猿払村民の生活自体に問題は少なくとも、公共交通機関には厳しい状況が続いている。

鬼志別ターミナルを出た稚内駅前ターミナル行きは、浜鬼志別まで戻り左折。国道238号を再び北上し、漁港の1つである知来別を過ぎる。ここでは新しい漁港の設備が建設中で、勢いを感じた。

バスにも1人乗ってくる。猿払村でも浜頓別町と同じく、中学生のスクールバスに村民が同乗できるサービスを行っており、鬼志別から知来別、芦野、浜猿払・浅茅野方面へ利用可能。路線バスを補完している。

天北宗谷線のバス
稚内駅前に到着した天北宗谷岬線のバス(筆者撮影)

知来別を過ぎて、しばらく進むと稚内市に入る。もはや国鉄天北線とは関係のない区間で、日本最北端の宗谷岬からは観光客が乗る。稚内空港を左手に見て、声問で鉄道ルートと合流するが、その辺りからはもう、ロードサイド店が目につく稚内の市街地だ。12時14分にJR稚内駅前のバスターミナル着。鬼志別から1690円かかった。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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