川崎・横浜の港を走る、知られざる「貨物線」の実力 石油から廃棄物まで運ぶ「神奈川臨海鉄道」
このような自然災害によるリスクに対し、神奈川臨海鉄道では次のような対策を講じているという。
「これまで鉄道が不通の際には、トラック輸送に切り替える等の対応を行ってきたが、長距離輸送のトラック手配は段々と難しくなっている。大阪くらいまではトラックで行けるが、それより遠方の九州へはフェリーやRORO船(貨物を積載したトラックやトレーラを輸送する船舶)を使おうということで、昨年から利用を開始し、自然災害へのリスク対策を強化した」(松田氏)
こうした課題がある一方で、貨物鉄道事業者にとって前向きな材料もある。近年、(1)カーボンニュートラル(CO2排出量削減)に向けた動きや、(2)トラック業界を取り巻く諸問題への対策などの観点から、鉄道による貨物輸送が見直される機運が高まっているのだ。
「2024年問題」は輸送合理化の好機
まず(1)については、「欧州を中心とする環境先進国の企業と取引がある大手企業のお客様は、すでに環境を意識した取り組みを開始されている。営業用トラックから鉄道に切り替えることでCO2排出量を約90%削減できることから、当社へも鉄道輸送に関するお問い合わせが増えてきている」(松田氏)という。
(2)に関しては、大きく2つの問題がある。1つは少子高齢化等に起因する若年トラックドライバーなり手不足の問題、もう1つがいわゆる「2024年問題」だ。働き方改革関連法により、2024年4月以降、トラックドライバーの時間外労働の上限(960時間/年)が適用され、違反すれば罰則の適用もある。ドライバーの労務管理・トラックの運行管理への影響は大きく、トラック輸送量の減少は避けられないと見られている。
こうした動きを踏まえ、「今後は鉄道・トラック・内航海運等の各輸送モードの特徴を活かすなどして、より効率的な輸送を実現していくことが必要」(松田氏)となる中、すでにトラック輸送から鉄道・船舶へのモーダルシフトの動きが出はじめている。今後、とくに鉄道が強みを発揮する大量・長距離輸送の分野において、貨物鉄道事業者には大きなビジネスチャンスが生まれるはずだ。
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