川崎・横浜の港を走る、知られざる「貨物線」の実力 石油から廃棄物まで運ぶ「神奈川臨海鉄道」
これらのほか、特徴的な輸送品目として浮島線で運転されている「クリーンかわさき号」が運ぶ一般廃棄物がある。川崎市が市北部の家庭から分別収集した可燃ゴミやプラスチック類、紙類の一部と、処理施設で発生する焼却灰を、武蔵野南線(鶴見駅―府中本町駅間の貨物専用線の通称)の梶ヶ谷貨物ターミナル駅から浮島線末広町駅まで専用コンテナで運び、浮島処理センター等で処理や資源化を行っているのだ。
「クリーンかわさき号」は、1995年10月から運転されており、従来の廃棄物収集トラックによる道路渋滞対策や、CO2(二酸化炭素)削減による環境対策として注目されている。
こうしてみると貨物鉄道の輸送サービスは、工場など大口顧客に特化していると思われるかもしれないが、実は個人でも利用可能であり、引越時の家財輸送や宅配便では運べない容積や重量の貨物の輸送などにおいて、一定の需要があるという。
現在の貨物鉄道を取り巻く環境は?
次は貨物鉄道を取り巻く現在の事業環境について見ていく。まず、昨今のコロナ禍の影響について、松田氏に聞いた。
「石油や廃棄物の輸送に関しては、コロナ禍の影響はほとんど見られないが、横浜地区発着のコンテナ輸送に大きな影響が見られた。2020年度に本牧埠頭駅に到着する紙製品が、国内外の紙需要の減少により大きく落ち込んだ。国内向けは新聞広告・チラシの減少、テレワークの浸透によるオフィス用紙の消費減、海外向けはイベント等の経済活動の中止にともなう紙の消費減が原因と思われる。2021年度に入ってからは、横浜本牧駅から発送する食品類が外食産業の不振、個人消費の低迷により落ち込んだ。いずれも輸送量は回復に向かっているが、コロナ前の水準までには回復していない」
また、将来を見据えたときに、コロナ禍よりも、より大きなリスク要因となる可能性があるのが、近年、激甚化している自然災害だという。
「2018年7月に発生した西日本豪雨と9月末の台風24号の影響で、JR山陽線の不通期間が100日に及び、延べ約4400本にのぼる貨物列車が運休した。自然災害の影響により、貨物輸送の主要線区が長期間不通となり貨物列車の運行に支障をきたすケースが増えている」(松田氏)
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