娘の貞操が心配でも、門限なんか決めるな 親が本当に伝えるべきこと

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実際に現代の若年層では、結婚前にセックスをすることは当然のこととなっています。門限で縛ったところで、ラブホテルは昼間は割安ですし、サークルの合宿だと言って彼氏と旅行に行くわけで、実は門限は若年層の性を押しとどめるという意味では、ほとんど役に立っていないことがわかるのです。

もちろん、結婚まで性関係を持たないという人の自由は守られるべきだと思うのですが、婚姻の3分の1が離婚する時代にあっては、結婚後に別の人との性関係が生じることは、特に珍しいことではないでしょう。性は今の時代、相手を選ぶ際の要素のひとつになっている場合が多いと考えるべきなのです。

親が本当に教えるべきこと

「夜道は危ないから」と言う人もいます。日本の夜道は、諸外国に比べればかなり安全な部類に属しますが、それでも女性が、男性とは少し違う緊張感を持って、夜道を歩いているのは間違いありません。しかし、本当に心配の理由が「危険な夜道」ならば、彼氏の部屋に泊まってくればいいだけのことです。ここでも親は門限を設定するだけで、見て見ぬふりをしているのです。

「寝た子を起こすな」という表現が性教育の場ではしばしば使われますが、大学生ともなれば、子どもはみんな起きています。親の前で寝たふりをしているだけです。そして親が見て見ぬふりをしてしまうために、誰からもきちんとした性教育を受けることなく、いきなり「実践」の場に放り込まれるのが、日本のはたち前後の若者たちなのです。

門限の代わりに、「お互いの性についてよく話し合うこと」「イヤなことはイヤだときっぱり拒絶すること」「必ずコンドームを使うこと」。男子学生なら、「相手の意思をきちんと尊重すること」「それを無視したら犯罪だということ」。こうしたことをきちんと伝えるのが、親の本来の仕事であるはずなのです。

そうした教育を受けておらず、さらにはモーニングアフターピル(産婦人科で処方される緊急避妊薬)の種類どころか、存在も知りません。なので、相変わらず私の講義は、「大学生のための性教育」といった意味を持っており、カップルを含むたくさんの学生さんが出てくるのです。

この話を講義でしたら、ある女子学生が「実家から届いた小包の中にコンドームが入っていた、理解のある親でよかったと思う」と感想を返してくれました。そう、門限よりもコンドームのほうが、ずっと彼女を守ってくれるのではないでしょうか?

瀬地山 角 東京大学教授

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せちやま かく

1963年生まれ、奈良県出身。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、学術博士。北海道大学文学部助手などを経て、2008年より現職。専門はジェンダー論、主な著書に『お笑いジェンダー論』『東アジアの家父長制』(いずれも勁草書房)など。

「イクメン」という言葉などない頃から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食の支度も担当。専門は男女の社会的性差や差別を扱うジェンダー論という分野で、研究と実践の両立を標榜している。アメリカでは父娘家庭も経験した。

大学で開く講義は履修者が400人を超える人気講義。大学だけでなく、北海道から沖縄まで「子道具」を連れて講演をする「口から出稼ぎ」も仕事の一部。爆笑の起きる講演で人気がある。 
 

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