それには有料衛星放送のイメージから脱却する狙いがあるように思います。音楽、スポーツ、ドラマを売りにした有料会員ビジネスのWOWOWにとって、配信系の強力なライバルが増えた今、「少しでも多く独自の配信サービスに集中投資していきたい」というのが本音でしょう。新生U-NEXTの株式を取得するのは、今のところPPJの株主のうちTBSホールディングスと博報堂DYメディアパートナーズのみであることからも、各社の考えの違いを裏付けることができます。
3年後には7000億円の市場規模
一度は「テレビ系オールジャパンの有料動画」を掲げて共に可能性に賭けた6社が集まったわけですが、PPJが5年後に出した答えはU-NEXTの下で低燃費運営をするというものでした。NHKオンデマンドがU-NEXTで展開している「まるごと見放題パック」のような形態でParaviのブランドは残っていくのかもしれませんが、国産テレビ系の動画配信が今、曲がり角に来ていることは間違いないでしょう。
主なテレビ系の動画配信にはほか、日本テレビのHuluジャパンとフジテレビのFOD、テレビ朝日のTELASAがあり、HuluはU-NEXTと同規模の会員数で健闘し、FODは雑誌の読み放題などU-NEXTのような多様なサービスを展開、TELASAはタイのBLドラマを充実させて旬なコンテンツを揃えています。
一方で、会員数はNetflix、Amazon、ディズニーのそれと引き離されるばかりです。動画配信サービスの国内市場規模は2021年に4000億円規模に増加し、3年後の2026年には7000億円まで拡大するといわれていますが、楽観視はできません。広告付きプランなど多様な形態が浸透していくことや、日本にまだ上陸していない外資系サービスの参入も予測に含まれているからです。
ParaviがU-NEXTに吸収されることが決まったほぼ同じタイミングに、くしくもフランスでは国産テレビ系Saltoの終了が発表されました。Netflixなどアメリカのサービスに代わるフランス国産サービスとして銘打たれていたものの会員数は80万人にしか伸びず、日本に限らずテレビ系動画配信の限界を感じます。
Saltoに出資していたテレビ局の1つM6はSaltoに代わる今後の投資を成長分野の「FAST」(広告付きの無料ストリーミングサービス)に集中させていくようで、同じ欧州ではすでにイギリスがテレビ系が得意とする広告モデルで配信事業を立て直す流れを作っています。
日本のテレビ局も動画配信市場で新たな試金石に手を出すのか否かはまだわかりませんが、財産であるコンテンツを生かすために「どうする国産テレビ系」に対する答えを早めに出す必要はあります。しばらく選択を迫られた忙しい状況は続いていきそうです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら