本当のところ「水」はどれくらい飲めばいいのか 適切な水分補給が老化を遅らせる可能性

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これによると、血清ナトリウム濃度が正常域内の高値にある人は生物学的老化の進行の徴候がみられた。代謝、心臓血管の健康状態、肺機能、炎症にまつわる15種類の健康マーカーで評価したところ、血清ナトリウム濃度が142mmol/lを超える人は137~142mmol/lの人に比べ、生物学的年齢が暦年齢よりも高い確率が10~15%増加し、144mmol/lを超える人はこの確率が50%増加していた。また、血清ナトリウム濃度が144.5~145mmol/lの水準になると、137~142mmol/lに比べて早期死亡リスクが21%増加する。

血清ナトリウム濃度が正常域内の高値にある人は慢性疾患を発症しやすいことも示されている。血清ナトリウム濃度が142mmol/lを超える人は心不全、脳卒中、心房細動、末梢動脈疾患(PAD)などの慢性疾患や慢性肺疾患、糖尿病、認知症の発症リスクが最大で64%増加した一方、138~140mmol/lの人は慢性疾患の発症リスクが最も低かった。

女性で1.5~2.2リットル、男性で2~3リットルを推奨

これらの研究結果は因果関係を裏付けるものではないものの、研究論文の筆頭著者でアメリカ国立心肺血液研究所のナタリア・ドミトリエワ博士は「適切な水分補給が老化を遅らせ、病気のない生活を長続きさせる可能性があることを示すものだ」と考察するとともに、「血清ナトリウム濃度が142mmol/l以上の人は水分摂取量を評価することが有益だ」と説く。

全米医学アカデミー(NAM)では、1日の水分摂取量の目安として、女性で1.5~2.2リットル、男性で2~3リットルを推奨している。

(執筆者:松岡由希子)

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

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