すき家、なぜ今になって「牛丼値上げ」なのか 浮かび上がる"2つの伏線"と"1つの疑問"
牛肉価格が下落しているにもかかわらず、すき家が値上げに踏み切るのはなぜなのか――。ある焼き肉チェーン首脳は、足元の牛肉価格の変化について「中国で米国産牛肉の輸入規制が厳しくなっているため」と説明する。
年末年始から取り締まりが強化
2003年12月に米国でBSE(牛海綿状脳症)が発生して以降、米国産牛肉の輸入を禁止している中国。だが、実際には香港やベトナムを経由し、米国産牛肉が現地で流通してきた。
ところが、この年末年始ごろから中国当局の取り締まりが強化されたため、「米国の肉業者が中国向けを意図した輸出を抑え始めた」(前出の焼き肉チェーン首脳)。結果として中国向けの輸出量が減っていることが、足元の下落につながっている。
ただ、「円安の定着や、豚や鶏に比べ飼育期間が長い牛の特徴なども考えれば、今回の下落は一過性にすぎない」(別の牛丼チェーン幹部)。
興津社長も「中長期でみれば、高い水準であることには変わりない。こうした点も考慮して、今回の価格改定に踏み切った」と語る。2011年には米国産の冷凍バラ肉が1キログラム当たり500円台だったことを踏まえれば、足元の価格は決して低くはないというわけだ。
さらにすき家は目下、労務環境の改善に向け、いわゆるワンオペ(接客、調理、清掃などすべてを1人でこなす深夜の勤務体制)の解消を進めている。複数勤務体制が整わずに深夜休業している店舗は、昨年10月の1254店から今年3月末時点で616店にまで減少した。すき家としては人手を確保し、1日も早い全店再開を目指す方針だが、こうした施策による人件費の上昇も、今回の値上げとは無縁ではないだろう。
「値上げに踏み切っても、商品のブラッシュアップで入客数は伸びる」と見る興津社長。吉野家では値上げ以来、今年の1月、2月と前年同月比で18%程度の客数減が続いている。すき家の新牛丼は消費者にどう受け入れられるか。4月以降の月次動向が、今後のすき家を占う大きなポイントになりそうだ。
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