日本が得意とするキャラクター力と心理的な恐怖を掛け合わせると、世界と勝負できるサイコサスペンスが作れることを証明しているようでもあります。狙いどころを心得た制作陣を揃えていることからも納得できます。
監督は「岬の兄妹」「さがす」を代表作に持つ片山慎三です。韓国映画史上初のアカデミー賞作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」のポン・ジュノ監督の下で助監督を務めた経験のある監督でもあります。また脚本はアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」の大江崇允が務め、プロデューサーに「闇金ウシジマくん」シリーズを手掛けた岩倉達哉、「ドライブ・マイ・カー」の山本晃久らの名前が並びます。国内外で評価を受ける制作陣ばかりです。
チープ感が否めないVFXシーン
惜しい点は1つだけです。今やこの手の作品では必須のVFX技術の使いどころが心もとないのです。劇中で阿川(柳楽)が熊に襲われるシーンや高杉真宙が演じる寺山京介の“喰われた顔”などの見せ場でチープ感が否めません。
世界最大のオンラインデータベース「IMDb(インターネット・ムービー・データベース)」に投稿された海外からのレビューにもVFXへの指摘がみられます。「なぜこんな残念なクオリティのCGを採用したのか理解できない。視聴体験が大きく損なわれてしまう」といった感想が寄せられています。作品全体の評価が高いだけにもったいなく思います。
今どきの海外配信ドラマは1話につき数億から数十億の予算がかけられ、ましてやディズニープラスの全世界の会員数は今やNetflixを上回る2億人超えですから、トップランナーに対して期待値が高くなってしまうのは当然です。また海外にも日本の漫画原作に価値を置くファンは一定数いるため注目度が高く、愛情の裏返しで厳しく評価もされます。
一方で、シーズン2への期待も高まります。公式発表はされていませんが、ラストシーンは明らかにシーズン2に続いていくような展開です。現在配信されている全7話は、完結している原作の約半分のストーリーのみ反映されていることからも裏付けることができます。シーズン1の実績次第で続編の予算が増えることは多く、「ガンニバル」もVFXシーンにもう少しコストをかけてさらに見応えあるものになる可能性が十分にあります。
いずれにしろ、手強いディズニーの底力が発揮されている作品であることは間違いないです。ディズニー配信オリジナルの方向性がわかるものとして、見る価値は十分にあります。
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