加えて、はた目から見ると献身的な妻も実は気が強く口が悪い。そんな役柄を吉岡里帆が自然体に演じ、好感が持てます。揃ってヤンキー気質のこの2人のタッグならば、危険を冒しても村人がひた隠す真相に迫っていけるのではないか。そんな期待まで持ててしまうのです。
村社会で生まれたカニバリズム
物語の舞台は都会から遠く離れた山間にある「供花村(くげむら)」という名の架空の村で、住民もこれまた表と裏の顔があるキャラクターだらけです。なかでも村を支配する一家は怪しさに満ち、次期当主の後藤恵介を笠松将が、元当主の後藤銀を倍賞美津子が演じています。この後藤一族の排他的で異常性のある言動が人喰いの噂とどう関係しているのかは、回が進むごとに明らかになってきます。
劇中に直接的な残虐描写もありますが、謎を解き明かしながら不安をじっくり増幅させていく展開こそドラマ「ガンニバル」の怖さにあります。世界にも評価される日本のホラー映画に見られるような恐怖の作り方です。
さらに、村社会で生まれたカニバリズムという設定を大いに生かして、リアリティさまで感じるほどです。風変わりな掟や慣習も疑わず、村八分の制裁を受けるぐらいならそれを守り抜こうと強迫観念さえ生まれてしまうのは、閉鎖されたコミュニティ特有のものであることがありありと伝わってきます。
倫理観や科学的根拠もここでは意味がないことを植え付けてくるので、余計に恐怖を覚えるのです。同じように村を舞台にしたヒットホラー映画「ミッドサマー」に通じるものがあります。
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