ディズニー人喰いドラマ「ガンニバル」惜しい1点 原作は累計発行部数「215万部」のヒット漫画

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加えて、はた目から見ると献身的な妻も実は気が強く口が悪い。そんな役柄を吉岡里帆が自然体に演じ、好感が持てます。揃ってヤンキー気質のこの2人のタッグならば、危険を冒しても村人がひた隠す真相に迫っていけるのではないか。そんな期待まで持ててしまうのです。

作品の世界観を理解しやすいキャラクターが特徴にある。右から柳楽優弥、志水心音、吉岡里帆(画像:ディズニープラス)

村社会で生まれたカニバリズム

物語の舞台は都会から遠く離れた山間にある「供花村(くげむら)」という名の架空の村で、住民もこれまた表と裏の顔があるキャラクターだらけです。なかでも村を支配する一家は怪しさに満ち、次期当主の後藤恵介を笠松将が、元当主の後藤銀を倍賞美津子が演じています。この後藤一族の排他的で異常性のある言動が人喰いの噂とどう関係しているのかは、回が進むごとに明らかになってきます。

人喰い村と噂される供花村を支配する後藤家の次期当主役を演じる笠松将(画像:ディズニープラス)

劇中に直接的な残虐描写もありますが、謎を解き明かしながら不安をじっくり増幅させていく展開こそドラマ「ガンニバル」の怖さにあります。世界にも評価される日本のホラー映画に見られるような恐怖の作り方です。

村を支配する後藤家の元当主を演じる倍賞美津子のすごみをきかせた演技は恐怖感を煽る(画像:ディズニープラス)

さらに、村社会で生まれたカニバリズムという設定を大いに生かして、リアリティさまで感じるほどです。風変わりな掟や慣習も疑わず、村八分の制裁を受けるぐらいならそれを守り抜こうと強迫観念さえ生まれてしまうのは、閉鎖されたコミュニティ特有のものであることがありありと伝わってきます。

倫理観や科学的根拠もここでは意味がないことを植え付けてくるので、余計に恐怖を覚えるのです。同じように村を舞台にしたヒットホラー映画「ミッドサマー」に通じるものがあります。

次ページ日本が得意とするキャラクター力と心理的恐怖の掛け合わせ
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