トヨタ新体制に見たレクサスとEVの確かな道筋 従来と違う次世代BEVはプレミアムブランドが担う

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そのうえで、操る楽しさという要素は間違いなく重要度が増す。実際、レクサスは昨年、BEVにマニュアルトランスミッションを組み合わせた試作車の存在を明らかにしている。また今年の東京オートサロンに出展したAE86型カローラ レビンのBEVコンバージョン仕様。実はその開発はレクサスで、渡辺氏の下で行われていた。これは一例にすぎないが、とにかくこんな具合で既存メーカーにはない発想に期待したいところだ。

また、レクサスはすでに「レクサス エレクトリファイドスポーツ」なるコンセプトカーも披露している。0-100km/h加速2秒台前半、航続距離700km以上、全固体電池の搭載も視野にあるというこの高性能BEVは、スーパースポーツカー「LFA」開発で作りこんだ走りの味を継承する存在とされる。こうしたハイエンドのモデルで技術をアピールした後、普及モデルのラインナップを拡大していくのも1つの手だろう。

レクサスが何を目指すのかが明確に

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そして、ここで培われたものが、その先にトヨタブランドにまで展開されることになる。わかりやすく言うならば、アウディが先行開発したものが、将来的にフォルクスワーゲンにも展開されるような図式であり、トヨタ自動車という大きな傘の下に展開されるプレミアムカーブランドであるレクサスのあり方としてふさわしいかたちであることは間違いない。

一昨年、「レクサス エレクトリファイド」と銘打って、2035年の全車種BEV化を目指すと発表して以降は大きなメッセージの発信がなく、レクサスがどんなかたちでそこに至るストーリーを想定しているのかは、正直これまで今ひとつ見えてきていなかった感がある。それが新体制になって非常に明確になり、まさに適任の新プレジデントが据えられることとなった。そんなわけで個人的には今後のレクサス、今まで以上に期待が高まっている次第なのだ。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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