方向感のない米国株式市場を読む2つの重要指標 「金利」や「経済指標」の強弱をどう解釈すべきか
もう1つの先行指標は、人材派遣業の雇用者数だ。このデータがなぜ先行指標かといえば、雇用リストラはまず派遣切りから始まり、それでも不十分であれば、そのあとに正社員がカットされるためだ。
この雇用者数も、1月分は前年12月から小幅な増加を見せたものの、昨年3月をピークに始まった減少基調を覆せていない。すると、やはり雇用市場は今後悪化していき、それがアメリカの個人消費を減退させて、市場の関心は金利から業績悪化に移りつつ、株価が下落基調を鮮明にすると予想する。
ちなみに、「金融引き締めの累積的な影響によりアメリカの経済が悪化していく」と冒頭で述べたが、それは政策金利水準の上昇にとどまらず、資金量の収縮も含んでいる。
アメリカのマネタリーベース(中央銀行が市場に供給した資金量)の前年比は、昨年4月以降マイナスが続いており(しかも減少率は拡大基調にある)、量的引き締めがアメリカの経済と株価を冷やすと見込まれる。
先物市場は日銀人事で揺れたが拙速な売買は回避を
さて、そのほか市場に波乱を呼んだ出来事としては、日本銀行の総裁・副総裁人事をめぐる思惑が挙げられる。6日には「政府が雨宮正佳副総裁に総裁就任を打診した」との観測報道が伝わった。雨宮氏が現執行部であることから、「金融政策は大きくは変わらず、金利は上がらない」との見解が広がって、日本株高や円安に振れる局面があった。
その後、10日になって「植田和男元日銀審議委員が総裁に起用される意向だ」との報道から、そうした株高や円安の揺り戻しが一時生じた(報道は東京株式市場の引け後であったため、株価指数先物の反落という形で起きた)。
ただ、新総裁が誰であっても、金融政策の拙速な変更を進めて、市場に混乱を引き起こすことは避けるだろう。投資家も日銀人事に関する観測でドタバタと売り買いすることは、避けるべきだ。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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