方向感のない米国株式市場を読む2つの重要指標 「金利」や「経済指標」の強弱をどう解釈すべきか
アメリカの株式市場は、金利観のみならず、経済指標の強弱をどう解釈してよいかについても、右往左往しているようだ。
前述の(1)逆金融相場と(2)逆業績相場を対比すると、
(2)経済指標が弱い→業績懸念→株安
という判断になる。
すると、経済指標の強弱をどう解釈すべきか(もし指標が強い場合は上記の(1)(2)をすべて逆に読む)は、株式市場が(1)(2)のどちらの様相が強いかで、まったく逆になる。投資家としては、売買の判断に戸惑い、一段と市況の方向性が見出しにくくなっている。
一例として、2月3日に発表された1月の同国の雇用統計を取り上げよう。この日公表された非農業部門雇用者数の前月比を見ると、12月分が22.3万人増から26.0万人増に上方修正されたうえ、1月分は51.7万人増と大幅な増加を記録した。
このため、同国の株式市場では「景気が強いのだから企業業績にもプラスで、株価は上がるはずだ」という見解と「景気が強いのだから金利が上がって、株価は下がるはずだ」という見解が同時に交錯し、株価指数は上下に不安定に振れた。その日が終わってみれば、金利上昇懸念のほうが勝って、主要株価指数は前日比で下落する形だった。経済指標の解釈をめぐっても、これから不安定な市況が続くと覚悟せざるをえまい。
アメリカの雇用を見る2つの先行指標に注目
それはさておき、実際のアメリカの雇用が強いか弱いかという実態面については、今後悪化していく(雇用者数が減っていく)と懸念する。それを考察するうえで、雇用の先行指標と考えられるデータ2つに注目している。
1つは、週当たり労働時間の増減だ。これは、景気が悪化して仕事量が減った場合、とくに残業や休日出勤などの労働時間が減っていくが、経営者はすぐには雇用リストラを行わない。しばらく経っても仕事量が低迷し続ければ、そうした事態を踏まえて、あとから雇用削減を始める。
この週当たり労働時間の前年比は、2022年3月から12月までマイナス圏で推移していた。これが今年1月分はプラスに転じたものの、過去を調べると2022年2月はその月だけ増加していた(その前後はマイナス基調)。直近の1月のデータもこれと同様の一時的な増加にすぎないのか、それとも今後のプラス基調の始まりなのかは、現時点では予断を許さない。
ただ、ここ1年以上もの間、2022年2月の一時的なプラスを除けばマイナス圏での推移が優勢であったことを踏まえると、雇用の先行きを楽観視するのは危険なように思われる。
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