方向感のない米国株式市場を読む2つの重要指標 「金利」や「経済指標」の強弱をどう解釈すべきか

拡大
縮小

しかし、両日の議長発言には「金融引き締めはまだ十分な効力を発揮していない」「市場で織り込まれているよりも政策金利を引き上げなければならないかもしれない」などのタカ派的な内容も多く含まれていた。株式市場は、そうしたタカの部分に対して高をくくり、ハトの部分ばかりにハッと驚き、喜んでいたと判断できる。やはりアメリカの株価は「浮かれすぎ」であったといえよう。

4人の高官が相次いで「市場の浮かれすぎ」を警告

こうした「浮かれ市場」に「きちんと現実を見ろ、過度の楽観を抱くな」と冷水を浴びせたのは、ほかの連銀高官たちの相次いだ発言であった。

2月8日には、3人の高官が相次いで金融政策について言及した。具体的には、クリストファー・ウォラー理事が「想定より高い水準の政策金利が、より長い期間とどまる可能性がある」と発言。また、ミネアポリス連銀のニール・カシュカリ総裁も「もっと引き締めをやる必要がある」、加えてニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁も「金融政策を十分に引き締め的にして、それを数年間は維持する必要がある」と、それぞれ金利先高観を強める発言を行った。

さらに翌9日も、リッチモンド連銀のトーマス・バーキン総裁が「インフレはピークを過ぎた可能性が高いものの、依然高止まりしている」と語り、ダメ押しを行った。

これら4人の高官の中でも、とくにウォラー理事は以前セントルイス連銀の調査局長、ウィリアムズ総裁はスタンフォード大学で経済博士号を得たエコノミストという肩書きを持つ。この2人はデータ分析に基づいた地に足のついた判断を行うとの定評があり、市場では両氏の発言を重視する向きが多い。このため、先週は先々週とは逆に「先行きの利上げ幅が大きくなる」との見解が広がり、株価の重しとなった。

現在のところ、金利先物の価格からは次回3月と5月のFOMCで0.25%ずつの利上げが行われ、さらに6月のFOMCでは政策金利が据え置かれる、という見解が、ほぼ一貫して多数であると推察されている(シカゴ先物取引所の分析による)。

それでも、6月利上げの先物市場における織り込み度合いが、1週間前(2月3日)は13.6%であったものが、先週末の10日では38.4%に大きく上昇しており、市場が金利先高観を膨らませている。こうした市場における金利観の振れは、アメリカの株価だけではなく、ドル相場も動かしている。諸市場の波乱はまだまだ続き、株価や為替相場は上下動を繰り返すだろうが、次第に下方向の動きを強めていくと懸念する。

次ページ経済指標の解釈も定まらない
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT