サクラにアリア…電動車に「技術の日産」は宿るか 氷上で見た「電動パワートレイン」巧みな制御

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こうした電動車のモーター制御については、日欧米韓中と各国のメーカーがさまざまな方式で量産しているが、日産はe-4ORCEが世に出たときから常々「他社に先んじてリーフを大量生産したこと、またe-POWER生産量も多いことで、モーター制御に関する実用場面での基礎データは他社より多く、e-4ORCEではきめの細かい制御が可能となっている」と自社技術の優位性を強調している。

また、サクラとeKクロスEVのほか、エクストレイルと車体を共有する「アウトランダーPHEV」で開発をともに行っている三菱自動車工業に対して、「電動車の制御について優れた開発能力があり、日産としてかなり参考になっている」とも指摘する。

こうしたe-4ORCEの優れた「先読み制御」は、エクストレイルでも明確に感じ取れた。

e-POWERを採用するエクストレイルの走りも自然だった(写真:日産自動車)

再確認した「技術の日産」

エクストレイルはアリアと比較すると300kg近く軽いのだが、車高が高く、搭載するバッテリー量が少ないため、アリアほどの低重心は感じない。また、モーター出力にも差があることから、クルマ全体の動きとしてはアリアよりゆったりしていて、そこに“e-4ORCEが的確にサポートを入れる”といった雰囲気だ。

先代エクストレイルで採用された「Intelligent 4×4」と、雪上や氷上での安定性を比較した図表を見ると、トルク/車速/Gなどの変化における数値の振れ幅が、e-4ORCEによって大きく縮小していることが分かる。

氷上でエクストレイルを走らせた実感としても、コーナーでは一定量のロール(傾き)をする乗り心地の良さがあったし、さらにハンドルを多めに切ったり少しオーバースピードでコーナーに入ったとしても、クルマの軌道が外側にズレる“アンダーステア”をあまり気にせず、自然体で安心して走ることができた。

e-POWER 4WDのノートとe-4ORCEのオーラに乗ってみると、端的にコンパクトカーはボディが小さく軽いため、氷上での操縦安定性は基本的に優位であることが改めてわかった。特にe-POWER 4WDはシステム構成が最適化され、コストバランスと走りのバランスが上手く保たれていると感じる。

FRのフェアレディZは氷上でコントロール性の良さが強調された(筆者撮影)

今回、唯一のFRだったフェアレディZはとてもバランスが良く、非常にコントロールしやすいことに驚いた。2022年夏に北海道のテストコースで乗って感じた“クルマとしてのバランスの良さ”が、氷上でもしっかりとわかったと言える。

今回の女神湖氷上試乗会で計10モデルをじっくり乗り比べて感じたのは、日産の技術力の高さだ。「技術の日産」というキャッチコピーを久々に思い出した。

桃田 健史 ジャーナリスト

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ももた けんじ / Kenji Momota

桐蔭学園中学校・高等学校、東海大学工学部動力機械工学科卒業。
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

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