サクラにアリア…電動車に「技術の日産」は宿るか 氷上で見た「電動パワートレイン」巧みな制御

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駆動方式はFF(前輪駆動車)だが、制御次第ではもっとスゥーッと走り出すことも可能なはずである。だが、日産はあえてそうせず、誰がどのような走り方をしても“絶対に無理がないように”といった、安心安全の方針を強く押し出した制御をしたのだろう。

ところがコーナリングになると、安心安全の感じ方が大きく変わる。ハンドル操作に対して、サクラはとても良く曲がってくれるのだ。

BEVの特徴でもある低重心が生きるサクラ(写真:日産自動車)

大型電池パックを車体下部に置いているBEVは重心が低くなるため、コーナリングの安定性やハンドリングが良くなるというのが一般的な解釈だ。サクラは、そうしたBEVの基本特性にくわえ、車両前後の重量バランスがとても良い。

この前後重量バランスの良さは、サクラおよび兄弟車である三菱「eKクロスEV」の開発担当者が2022年に舗装路面で行ったメディア向け試乗会でも強調していたことだが、氷上走行ではそれをはっきりと感じ取ることができる。

また、コーナリング中のモーター制御がきめ細かであるため、クルマ全体の姿勢の安定感も高い。サクラは、アイスバーンを含めて降雪地帯での「生活車」として扱いやすい軽BEVであることを実感した。

アリアの走りを司る“先読み”制御

次に、今回の試乗の真打ちとも言える、「アリア」のe-4ORCE搭載モデルだ。とにかく、発進時の加速が見事で驚いた。まるで、普通の舗装路で自然に加速しているような感覚だったのだ。

しかも、ドライバーの意思に反してクルマが積極的に制御するような“ドライバーに対する嫌味”がまったくない。

フィードフォワード制御が走りの“自然さ”を実現しているアリア(写真:日産自動車)

日産によると、e-4ORCEの制御システムは、操作や車両状態を認識する各種信号をまず「Chassis Control ECU」に集約し、そこから駆動トルクと前後のトルク配分というモーター制御の司令を出す仕組みとなっている。

状況変化が“起こったあと”に制御するのではなく、“起こるであろう”状況を先読みするフィードフォワード制御によって、ドライバーの操作に対してクルマ全体の動きが実に自然に感じられるのだ。

コーナリングでは、ハンドル操作に対するクルマの動きが極めて自然だ。アリアの車重は2210kgとサクラの約2倍もあるが、決して“重ったるい”という感じがしないから不思議だ。 

Chassis Control ECUから、モーター制御系とブレーキ制御系の双方にフィードフォワード制御として目標車両制御を決定したうえで、的確な指令を出す。

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