三菱重工が国産初のジェット旅客機事業から撤退 培った知見は次期戦闘機の開発に活用というが・・・
三菱重工業は7日、国産初のジェット旅客機事業から撤退すると発表した。2020年にジェット旅客機「スペースジェット(旧MRJ)」の開発を事実上凍結していたが、事業性が見込めないことから名実ともに幕を下ろす決断をした。
同社は発表で、開発中止の理由として国が機体の安全性を証明する型式証明の取得には「さらに巨額の資金」を要するほか、海外パートナーの協力確保が困難なことや足元でのパイロット不足の影響で小型ジェット機の市場規模が不透明な点などを挙げた。
同社はスペースジェットで培った知見を次期戦闘機の開発などに活用していくとしている。また、泉沢清次社長は会見で、今後の取り組みの一環として「将来の完成機も視野に入れた次世代技術の開発や他社との共同検討も考えていきたい」とも語った。
08年に開発が始まったスペースジェットは初号機の納入が6度にわたり延期され、政府からの支援を含め巨額の資金が投じられてきた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で航空需要が激減し、三菱重工は20年10月にスペースジェット向けの開発費を大幅に縮小。主力機と位置付けていた「M90」の開発はいったん立ち止まることを明らかにしていた。
三菱重工株の7日終値は前日比2.3%安の4940円だった。同社の株価はスペースジェットの開発を始めた15年前とほぼ同じ水準にとどまっている。
三菱重工の小沢壽人最高財務責任者によると、同社は20年度末までに関連費用の大部分を損失処理しており、今回の開発中止の決定により新たに発生する損失はほとんどない。その一方で、初期発注者であるANAホールディングス(HD)傘下の全日本空輸を含めスペースジェットを発注した航空会社への補償が今後発生する可能性は残る。
ANAHD:5度にわたるMRJ納入遅れで三菱重側と補償交渉 (2)
補償への対応について泉沢社長は、納入の遅延発生時や開発の凍結の際に航空会社とは協議をしており、今回の開発中止を受け「引き続き丁寧に話をさせていただく」としたが、詳細についてはコメントを控えるとした。
ANAHDの広報担当者は補償について詳細は言及できないが、今後の契約の取り扱いについて三菱重工と協議を行っていくとした。日本航空の広報担当者は補償関連については契約上話すことができないとした。
(更新前の記事で全日本空輸の社名を訂正済み)
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(三菱重の株価情報を追加して更新します)
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著者:稲島剛史
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