油圧技術で変幻自在、キャンピングカーの新潮流 老舗カヤバが仕掛けたコンセプトモデルに迫る

拡大
縮小
室内
カヤバ製キャンピングカーの室内(筆者撮影)

あとは、乗車定員や就寝人数だが、この点は今回明かにされていない。一般的キャブコンの場合は、車体前方の運転席上部にキャビン部をせり出させ、バンクベッドという就寝スペースを確保するタイプも多いが、そうしたモデルでは乗車7名程度、就寝6名程度といった定員数が多い。一方、カヤバ製モデルでは、バンクベッド部がないため、就寝人数はもう少し少なくなるかもしれない。そのぶん、バンクベッドがあるキャブコンと比べると、先に述べたとおり、走行時に風を受けにくくなるため、操縦安定性はより高くなるというメリットがある。

ほかにも、例えば、最近の豪華なキャブコンは、停車中にテレビや冷蔵庫、家庭用エアコンといった家電が使えるように、大容量のサブバッテリーを搭載するモデルも多い。また、短時間の走行でサブバッテリーを満充電にできる高機能の走行充電システムや、大型ソーラーパネルを装備するなど、電気関連の機能がかなり進化している。とくに近年は、キャンプなどのレジャーはもちろん、災害時の避難場所としてもキャンピングカーを活用したいというユーザーが増えていることも背景にある。今後、もしカヤバがこのコンセプトモデルを実用化しキャンピングカーとして販売するとすれば、そうした電気関連の装備をどう充実させるかも課題となるだろう。

販売未定ながら参入に期待

カヤバの担当者は、「まだ開発段階のため、車両すべてを製造しコンプリートカーとして販売するのか、サスペンションなどの部品のみを販売するかは未定」だという。また、「今後、さまざまなイベントに(コンセプトカーを)出展し、市場の反響もみながら開発を進めたい」と語る。

東洋経済オンライン「自動車最前線」は、自動車にまつわるホットなニュースをタイムリーに配信! 記事一覧はこちら

いずれにしろ、1919年(大正8年)創業の老舗メーカーであるカヤバが、従来の油圧機器だけでなく、成長を続けるキャンピングカー業界へ新規参入を目指していることだけは確かだ。「100年に一度の変革期」といわれる自動車業界では、現在、さまざまな技術革新はもちろん、IT関連など新規企業の参入などもあり、今まで通りの事業内容だけでは生き残れない可能性も出てきた。

そのため、ほかの部品メーカーなどでも、さまざまな新規事業などを手掛け始めているが、カヤバも例外ではないのだろう。同社の新たな試みが、今後いかにキャンピングカー業界やユーザーからの支持を受けるのか、非常に興味深い。

この記事の画像を見る(37枚)
平塚 直樹 ライター&エディター

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT