キムタクが2度演じた「信長」映画とドラマの違い 「レジェンド&バタフライ」で描かれる信長像

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ドラマとの違いはまだある。美濃国(岐阜県南部)の戦国大名・斎藤道三(映画では北大路欣也さん、ドラマでは西田敏行さんが演じる)の娘であり、信長に嫁ぐ濃姫のキャラクターが激変しているのだ。

ドラマでは濃姫の芯の強さが描かれていたが、綾瀬はるかさん演じる『レジェンド』の濃姫は、そうした面に加えて、荒々しい気性、といった側面も描かれている。それゆえ、嫁いできた当初から夫・信長と激しくぶつかり合うのである。

ドラマでは信長と濃姫は最初は反目していたものの、徐々に心を通わせていったが、『レジェンド』ではどうか。信長暗殺を企図して嫁いできたことと、濃姫の気性も相まって、両者の交流は容易ではない。それゆえ、観客はドラマよりもいっそう、ハラハラドキドキしながら、スクリーンを見つめることになろう。

迫力を増しているキムタクの「信長」

さらに『レジェンド』での信長は、ドラマよりも迫力を増している。ドラマは「うつけ」(馬鹿)と呼ばれた青年期の信長を描いたものだが、映画は桶狭間の戦いや比叡山の焼き討ち(1571年)など、戦に戦を重ねて「魔王」と呼ばれたころの信長も描いている。

迫力ある演技は、木村さんがドラマ以降も時代劇(例えば2014年のテレビドラマ『宮本武蔵』(テレビ朝日))に出演し、経験を積み重ねてきた、ということもあるのかもしれない。

さて、信長の迫力もさることながら、『レジェンド』で目をひくのは、綾瀬さん演じる濃姫の迫力である。綾瀬さんと言えば、おっとりした天然のイメージがあるかもしれないが、『レジェンド』ではそうしたところはない。

前述した荒々しい性格で描かれており、まるで信長をも喰ってしまうのではないかと思わせる立居振る舞いと言葉の連続。濃姫にも殺陣のシーンがあるが、その腕前には唸らされた。綾瀬はるかという女優の凄さを再確認できる映画である。

ちなみにドラマでは織田信秀(信長の父)や、平手政秀(信長の傅役)と信長の交流がそれなりに深く描かれているが、『レジェンド』ではその部分は薄い。その代わりに、信長と濃姫、2人の夫婦の対立と絆が濃厚に描かれていく。2人の関係がどうなるのか。そこが大きな見所の1つだ。本作は、戦国時代を舞台にしたラブストーリーなのだ。

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