テスラ「業績絶好調」でも"中国では大苦戦"の苦悩 現地では「EVメーカー」の淘汰加速の予測の声も

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だからといって、中国メーカーが追随して値下げするのは簡単ではない。テスラの自動車販売の2022年10~12月期の粗利益率は25.9%。対してBYDは同年7~9月期で18.96%。

同社は長年、「売り上げが増えても利益が増加しない」状況が続いてきたが、この1~2年で販売台数が急増して利益が拡大するステージに入り、より利幅の取れる高級車へのシフトを試みているところだ。

NIO、理想やそれを追いかける第2グループは赤字経営が続いており、いずれの陣営も消耗戦には巻き込まれたくないだろう。

今のところ、テスラの年初の値下げ発表後に追随したのはAITOとXpengだけだ。

2009年並みの景気後退も

マスク氏は昨秋、大幅にコストを抑えたモデルXとモデルSの新型車を2023年末までに発売する計画も明かした。これらの価格が10万~20万元(約190~380万円)に収まれば、より多くの中国メーカーの土俵にテスラが乗り込んでくることになる。

テスラの値下げや廉価モデルの投入には「ブランドを棄損する」と反対の声もあるが、マスク氏は中国メーカーを「最もハードでスマートな仕事をする。尊敬している。中国の会社がテスラの次に来る可能性が最も高い」と発言しており、自社の利益を犠牲にしてもライバルにそれ以上の打撃を与えようとしているのだろう。

乗用車市場信息聯席会は1月10日、2023年の乗用車販売台数に占める新エネルギー車の比率が36%に達するとの見通しを示した。その2023年はマスク氏に言わせれば「2009年のような景気後退に陥る可能性が高い」。同年にトヨタ自動車の社長に就任した豊田章男氏は1月26日、EV時代を見据えて執行役員の佐藤恒治氏に後任を託すと発表した。

日本を代表する自動車メーカー、中国新興企業、そしてテスラのすべてが、2023年を荒波にもまれる1年だと覚悟を決め、動き出した。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
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公式サイト: https://uragami-sanae.jimdosite.com/
 

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