テスラ「業績絶好調」でも"中国では大苦戦"の苦悩 現地では「EVメーカー」の淘汰加速の予測の声も

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これまで2年にわたって値上げを続けてきたテスラは2023年1月、日本と中国で約10%の値下げを行ったのを皮切りに韓国、シンガポール、アメリカ、欧州、オーストラリアなど多くの市場で価格を引き下げた。

だが、実は中国では一足早い2022年9月から実質的な値下げを始めている。

同月末、購入者に対し保険料8000元(約16万円)を補助するキャンペーンを導入し、10月下旬に車両価格を引き下げた。11月、12月もキャッシュバックや助成金の拡充を行い、2023年1月6日の値下げでモデル3は22万9900元~(約440万円~)、モデルYは25万9900元~(約500万円~)と、いずれも2019年12月に上海工場で生産を始めて以来、最も安い価格になった。

中国乗用車市場信息聯席会の試算によると、テスラの2022年の中国での販売台数は同37.1%増の43万9770台。中国で同年、新エネルギー車(EVとプラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の3種)の市場が93.4%拡大したことを思えば、物足りなく見える。

昨年の値下げは上海工場の生産増強と需要停滞が重なったことを受け、販売台数を目標に近づけるためのカンフル剤と位置付けられた。

対して今年早々の値下げは、2023年の自動車市場の成長が減速する中で、次から次に出てくる中国メーカーの台頭を潰し、シェアを拡大する目的が大きいように見える。

テスラの「真の挑戦者」

中国は世界最大の自動車市場であると同時に、世界最大のEV市場でもある。2023年の新車販売に占める新エネルギー車の比率は3割を突破すると予想され、新旧メーカーがしのぎを削る。

テスラに刺激を受け、2010年代半ばに設立された「蔚来汽車(NIO)」「理想汽車」「小鵬汽車(Xpeng)」は新興EV御三家と呼ばれ、テスラと共にコロナ禍でEVブームを牽引してきた。新興EVの2番手グループでは昨年上場した「零跑汽車(Leap Motor)」、ファーウェイが深く関与する「AITO」、「哪吒汽車(Neta)」も販売を伸ばしている。

既存メーカーもEVシフトを加速する。「赤いテスラ」「中国のテスラ」と枕詞をつけられた中国メーカーは数あるが、テスラにとって初めての「本当の挑戦者」と目されているのが、今年1月31日に日本でEVを発売するBYDだ。

2020年までガソリン車の販売が新エネルギー車を上回っていた同社だが、2021年から2022年にかけて急激に新エネルギー車の販売を伸ばし、同年3月でガソリン車の生産を終了した。2022年6月に時価総額でテスラ、トヨタ自動車に次ぐ3位に躍り出て、自動車業界の「台風の目」として世界の注目を集める。

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