クラウンとRX「同じ心臓」持つ2車の決定的な違い それぞれのキャラクターに沿う作り分けのワザ

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大きく性格が異なるのがフットワークである。クラウン クロスオーバーを運転していると、いい意味で従来のクラウンと相通じるFR車のような感触で、これがFFベースということを完全に忘れさせる。クラウンはDRSを積極的に活用した操舵に対して車体全体で旋回姿勢に入るようなコーナリングで、従来のクラウンユーザーにも違和感や失望感を抱かせない身のこなしを実現しているのである。

それと比べるとRX500h“F SPORT Performance”は、ごく低速域でこそDRSの恩恵で軽快な感じが演出されているが、速度を高めていくと、むしろ挙動は安定方向となり、良くも悪くもDRSは存在感が薄くなる。背が高く車重が重いSUVだけに、ステアリングを切り込んだだけであまりグイグイ曲がるようにするのは控えたという部分もあるのだろう。

ハイライトはコーナー立ち上がりの挙動だ。旋回姿勢からステアリングを戻しながらアクセルを踏み込んでいくと、RX500h“F SPORT Performance”はリアのeAxleが強大なパワーとトルクを発生し、リアをわずかに沈み込ませながらの豪快な加速を味わわせてくれる。まるで大排気量後輪駆動車のようなこの加速感は、従来のFF車やそれをベースにする4WDでは実現できなかった、eAxleのメリットをフルに生かしたものといえる。

それぞれのキャラクターが際立つ走り

こんな具合で、ほぼ同じハードウェアを使っていながら、クラウンとRXではちゃんと別のスイートスポットを持った、それぞれキャラクターのしっかり備わった走りっぷりを実現している。もちろんクルマとしての位置づけもターゲット層もボディタイプも異なるのだから当然とはいえるが、その作り分けはやはり見事といっていい。

それにしても、こうした最先端のハードウェアをトヨタとレクサスの両ブランドがほぼ同時に使ってきたことには驚いた。発表はレクサスが先だったが、日本のユーザーの手に先に届いたのはトヨタ。それはクラウンの開発チームが、とにかく真っ先に出すんだとすさまじい勢いで突き進んだ結果だとも聞く。それが事実なら、まさにあっぱれというところである。

しかしながらコーポレート全体で見たときには、こうした最先端の技術はまずレクサスに使い、後にトヨタやGRにも展開していくというかたちを採るべきではないかとも思う。いや、各ブランドが切磋琢磨した結果、ユーザーにいいモノが届くのは、やはり歓迎すべきことだと考えれば、ここはレクサスにもっと奮起をと言うべきなのかもしれない。

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島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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