上手くいかない日々が続く人の「考え方のクセ」 茂木さんの思考実験でチェックしてみよう
「認知の歪み」というと悪い概念で、正さないといけないもののように思うかもしれませんが、認知が歪まない人間もいません。生きていて思考し、実践し、不具合を修正する、そうした日々の言動の積み重ねは自分の認知に基づくものですから、その正しさ/正しくなさも人や状況、環境によって変わります。
ただ、人間の認知は歪むものだと踏まえつつ、しかし、それについて自覚的であることが大切です。「私は悲観的になる傾向がある」「僕はイージーに考えすぎる傾向がある」と自分の認知の歪み方についてロジカルに分析し、目の前の問題に向き合ってみる。それこそが、人生において「論理的に考える」ということなのです。
「リンゴは木から落ちる」を論理的に思考してみる
たとえば、リンゴは木から落ちるとき、地面に向かってまっすぐ落ちていきます。
リンゴの木が身近にある場所で生まれ育った人は、それこそ思考力も育っていないような赤ちゃんの頃から、木から落ちるリンゴを見続けて育ちます。
「リンゴは木から落ちるもの」「落ちるときは地面に向かっていくもの」と認知し続けている。それが普通であり、それ以外の可能性は考えられません。
でも、同時代、同じ国に生まれ育った人で、「そういえば、どうして?」と考えた人もいたわけですね。アイザック・ニュートン(1643〜1727)、その人です。ニュートンはその気づきから近代物理学の礎となる「万有引力」を発見しました。
自分では気づかない、同時代性を持つ同一のコミュニティーの人は気づかない認知の歪みを超えて、真実に到達した一例です。
ニュートンといえば、興味深いエピソードがあります。1936年、ニュートンの未発表の著作がサザビーズで競売にかけられ、経済学者のケインズがその多くを落札しました。
ケインズが落札したニュートンの草稿の多くは、「賢者の石」や「エリクシル(卑金属を貴金属に変える触媒となる薬)」の発見についてなどの錬金術に関するものでした。
ちなみに、ニュートンが生きていた時代、錬金術の実験の一部は禁止されていました。しかし、それでもニュートンは研究と実験を終生続けたようです。ニュートンにとっては万有引力の発見さえ、錬金術研究の一過程だったのかもしれません。
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