攻めた作品であることは確かですが、一方で、いじめというテーマも、復讐劇というジャンルも、それ自体は出尽くした感があります。しかも、今どきとは言いがたい面もあります。イム・ジヨン演じるいじめ主犯格のヨンジンをはじめ、いじめっ子グループはお天気お姉さんにフライトアテンダント、画家などそろいにそろって一昔前のドラマのような職業に就き、憎たらしい表情を浮かべる演技は巧みながら昼ドラのような演出です。にもかかわらず、飽きさせないのはメッセージ性に新しさがあるからだと思います。
脚本家は高校生の子どもを持つ母親
脚本家が伝えたいことがわかりやすく、なおかつ独自の視点を持った作品ほどヒットする傾向があります。「ザ・グローリー」はまさにそんな作品です。脚本を手がけたのはヒットメーカーのキム・ウンスク。ラブロマンス「トッケビ ~君がくれた愛しい日々~」(2016年)や恋愛史劇「ミスター・サンシャイン」(2018年)など韓国ドラマを代表する数々の作品をこれまで生み出してきた脚本家です。
彼女の作品群の中で最も幅広く評価を得たのは恋愛ヒューマンドラマ「太陽の末裔 Love Under The Sun」(2016年)でしょう。今回の「ザ・グローリー」はこの「太陽の末裔」で主演を務めたソン・ヘギョと再タッグを組んだ作品でもあります。
脚本家キム・ウンスクにとって、復讐劇を描くのはこれが初めてだったそうです。高校生の子どもを持つ母親でもあることから、校内暴力という問題に自然と興味を持ち、執筆を始めたことを明かしています。
Netflix公式プロダクションノートでキム・ウンスクは「取材してわかったことは、いじめの被害者が加害者に求めるものは、物質的な補償ではなく、真の謝罪。暴力の犠牲になった瞬間に失われた尊厳や名誉、栄光を取り戻すことこそ、被害者にとって真の回復になりうると考えた」と語っています。だから作品タイトルを、栄光を意味する「ザ・グローリー」としたのです。
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