また脚本を書くにあたって、いじめの被害者に徹底的に寄り添うことを意識します。「いじめの被害者が最も傷つくのは、"じゃあ、あなたは何も悪いことをしてないんだね"と言われたとき。それがわかってから、この作品では被害者にまったく非がないように見えることを心がけた」という言葉のとおり物語が展開されていきます。
つまり、被害者が求めるものと被害者を傷つけない表現にこだわったこの2つがいじめ復讐劇に新しさをもたらしていると思うのです。腕のある脚本家ですから、物語の動かし方にも文句はありません。主人公ドンウンの一挙手一投足が囲碁の対局のように合理的で綿密に計算し尽くされています。
世界62カ国でトップ10入り
なお、現在配信中の全8エピソードで話は完結しません。パート2の配信は2023年3月に配信開始予定ですから、少々待たされます。今後の展開として気になるのはドンウンに恋心を寄せる整形外科開業医ヨジョンの存在です。若手俳優の中で注目度の高いイ・ドヒョンが演じています。Netflixヒット作「Sweet Home-俺と世界の絶望-」では生き残りグループのリーダー的ポジションだった医学生ウニョク役を演じた俳優で、多面性のあるキャラクターを演じるのがお得意。今回の役柄でもカギを握る人物となっていきそうです。
ドンウンがヨジョンに「私に王子様は必要ない。私に必要なのは一緒に剣舞を踊ってくれる処刑人なの」と言い放ったこのせりふは今後の2人の関係性を表してもいます。突如、熱愛へと方向転換されていくことはなさそうです。何より、この2人が登場するシーンに凝った映像表現を集約させていることに好感が持てます。季節が変わりゆくなかでひたすら囲碁を打ち続ける2人の姿に情緒を感じ、緊迫した展開が多いなかで、一息つけるそんな役割を持たせています。
ドンウンが“おばさん”と親しみを込めて呼ぶ復讐計画の影のパートナー、ヒョンナムもいい味を出しています。バイプレーヤー女優のヨム・ヘランが安定した演技を魅せています。親近感湧くおばさんの登場は韓国ドラマの十八番でもあり、抑えるべき要素をしっかり入れてくる辺りも抜かりがないです。
Netflixによれば、配信開始2週目の1月2日週に視聴8248万時間を記録し、英語以外の言語のTV番組で最も視聴された記録をマークしました。世界62カ国(1月15日時点)でトップ10入りし、幅広い地域で人気を集めています。韓国ドラマ好きのコア層とライト層の両方から支持されることを狙ったバランス感覚のよさが数字に表れています。古くて新しい作品であることがドラマ「グローリー」の強みなのです。
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