年収30億円富裕税で日本は平等に貧乏な国になる このままでは金持ちから先に海外へ逃げ出す
たった200億~300億円の増収のために、株式市場に悪影響を与え、かつ経済を引っ張っていく起業家たちのモチベーションを下げさせるデメリットは、あまりにも大きい。起業家たちがリスクを取っても見合うような環境を作らなければ、この国の産業の新陳代謝は絶望的だ。
世界の格差は「大金持ちがさらに大金持ちになる」ことによって生じたが、日本のそれは「中間層の没落による」との分析は、研究者の間ではほぼ一致したものだ。それなのに日本では、「国力」というパイを大きくしている人たちを引きずりおろし、パイの分配のみを考えている。このままでは中間層が没落しているだけでなく、全員が平等に貧乏になり、日本は共同貧困の国となる。
その意味で、この法案は筋が悪い。成功者に高いリターンを与える環境を作らないのなら、誰も頑張らないし、働かなくなる。格差是正を究極の目的とする社会主義国家が資本主義国家に敗れたのは、この辺にあるだろう。
私がモルガン銀行(現JPモルガン・チェース銀行)の在日代表兼東京支店長の時、多くの外国人部下たちが、「日本は世界最大の社会主義国家だ」と言って帰国していった。それが日本で働き、生活したうえでの感想だったのだ。日本は、大きな政府、多くの規制とともに、”結果平等”の税制を持つ社会主義国家なのだ。この法案はそれをよく表す事例である。
アメリカは5%の優秀層が国全体を大きくする
私は2022年、アメリカに2カ月間滞在した。留学時代に2年間過ごしたが、それ以来の久しぶりの長期滞在だった。JPモルガン時代にも感じてはいたが、今回の訪問で確信したのは、人口の95%で見れば、アメリカ人より日本人のほうが優秀だが、上位5%のアメリカ人は滅茶苦茶に働き、頭が抜群に良い天才たちだ。
日本人の上位5%よりはるかに優秀で働き者。その天才たちが作りだしたシステムにのっとって、残りの95%の人間が仕事をし、結果として、国全体がぐいぐい伸びていっている。それがアメリカだ。
パイが大きくなるのだから、95%の人たちも、日本人よりはるかに裕福な生活が送れる。そしてその天才たちの半分は海外からの移住組だ。GAFAの創設者をはじめ、経営幹部を見てみればよくわかる。たとえば米テスラの創業者、イーロン・マスク氏は南アフリカ共和国からの移民である。
彼らはアメリカで成功すれば大金持ちになれる。そしてその成功の報酬を、相続税を含む税金で国に持っていかれることもない。だから天才たちはアメリカを目指す。日本のように成功しても、大したリターンがないうえ、その少ないリターンからも税金をがっぽり持っていかれる、すなわち天才を引きずりおろす仕組みの国には、絶対にやってこない。逆に日本の天才たちはアメリカに逃げていく。そして日本は”平等に貧乏な国”になっていく。
日本のプロ野球では、すでにその現象が起きている。大谷翔平、ダルビッシュ有、菊池雄星などの高給取りの天才たちは、皆、大リーグに行ってしまった。高給取りが抜けた結果として日本のプロ野球は皆、報酬が低いが平等な組織となっている。
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