ローソンは、一流の上司をどう育てるか? 赤羽雄二×ローソン玉塚元一社長が激論!

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玉塚:上に立つほど「伝わっているつもり」になりがちです。朝礼で話をして、伝えたつもりでも、実は10のうち2、3くらいしか伝わっていないということだってありえるわけです。

「部下にやらせたほうがいい」は上司の逃げ

まずは上司自身が、自分が求めているアウトプットやゴールのイメージをしっかり伝えることが必要です。そのうえで、そこにたどり着くためには、「ここを押さえて、ここを詰めて、このレベルの成果物を作る」、と明確に示さないといけないわけです。「ここまでやるんだよ」ということを具体的に図や文章で示して、踏み込んで関与するということがとても大事ですよね。

勘違いしてしまいがちなのが、「部下にやらせたほうがいい」という言葉。

赤羽 雄二(あかば・ゆうじ)
東京大学工学部を1978年に卒業後、小松製作所で建設現場用ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了。1986年、マッキンゼーに入社。経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計と導入、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリード。1990年にはマッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国企業、特にLGグループの世界的な躍進を支えた。2002年、「日本発の世界的ベンチャー」を1社でも多く生み出すことを使命としてブレークスルーパートナーズ株式会社を共同 創業。最近は、大企業の経営改革、経営人材育成、新事業創出、オープンイノベーションにも積極的に取り組んでいる

赤羽:そう、「部下にやらせたほうがいい」というのは、上司の逃げですね。

玉塚:そのとおりだと思います。仮にやってもらうとしても、乱暴な仕事の与え方だと、どうすべきかが伝わらない。

上司が部下に対してゴールイメージ、アウトプットイメージを明確に示し、指導育成し、セクションのアウトプットの量や質を引き上げる。これを全社で実現することができれば、組織全体の成果は飛躍的に高まりますね。

赤羽:組織全体が変われば、生産性は軽く数倍上がりますね。アウトプット作成のイメージを共有することはすごく大事です。たとえば、書類や企画書だったら、上司はどういうアウトプットを期待しているのかを30分程度でたたき台として作成し、部下に説明して取り組んでもらう。所定の1週間や1カ月の間、頻繁に部下とミーティングし、部下ができないところを補っていく。そうすると、部下は過剰なストレスなく、途方に暮れることもなく、時間内にうまく仕上げていくことができます。

上司はあまりうまく教えない、あるいは教えられないから、部下が過剰にもがくことになるのです。水の中に投げ込んで「自力で泳いでみろ」と。しかし、多くの場合、部下はおぼれてしまうんですね。それで上司は、「ダメだなお前は」と罵倒してやらせるものの、最後は上司が自分で何とかせざるをえなくなって、結局、時間切れになる。その間、ほかの部下がほったらかしにされます。

玉塚:組織としては極めて生産性が低いですよね。丸投げしている上司は、そのほうが部下は育つと思っているのでしょうが、決してそんなことはない。もともと簡単なビジネスなんてないし、競争環境はどんどん厳しくなっている。その中で最適解を導き出しながらPDCAを回していこうとすると、上司は部下と一体になって関与し、具体的なビジョンを示していかないと対応できないと思います。

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