そうした問題のすべてがグーグルに対する反感を人々に抱かせ、同社が数十年かけて築いてきた企業ブランドにダメージとなりかねない。だが、オープンAIが示してきたように、新興企業は成長のチャンスと引き換えに、進んで反発を受けるリスクを冒してくるとみられる。
たとえグーグルがチャットボットを完全なものに仕上げられたとしても、今度は別の問題に直面することになる。このテクノロジーに、ドル箱の検索広告が食われてしまわないかという問題だ。チャットボットが簡潔な文章で質問に答えてくれるようになったら、人々が広告リンクをクリックする理由は減る。
「グーグルはビジネスモデルの問題を抱えている」。ヤフーとグーグルで働いた経験があり、現在は同様の技術を開発するスタートアップ企業ヴェクタラを経営するアムル・アワダラは、「グーグル検索で毎回完璧な答えが返ってきたとしたら、どの広告もクリックされなくなる」と話す。
グーグル先生が賢くなった背景には…
「ニューヨーク・タイムズ」紙が入手したメモや音声記録によると、グーグルのサンダー・ピチャイCEOはAI戦略を決める一連の会議に関与し、チャットGPTの脅威に対処するため、社内の多くのグループの仕事を一変させた。社員たちには、300万人以上に利用されているオープンAIの「DALL-E(ダリ)」のように、アート作品などの画像を生成できるAI製品を開発する任務も課せられた。
5月に開催が見込まれる大規模イベントまでの期間、新しいAIの試作品や製品の開発とリリースを支援するために、研究部門、信頼と安全部門などの部署でもチームの配置転換が行われている。
業界の専門家たちは、テクノロジーが進歩するにつれて、グーグルは検索エンジンを全面的に見直し、本格的なチャットボットを同社の旗艦サービスの顔にするかどうか決断を迫られることになると考えている。