すでにグーグルは、ラムダやチャットGPTなどのチャットボットと同じ技術を用いて、検索エンジンの強化に取り組んでいる。「大規模言語モデル」と呼ばれるこの技術は、単に機械が会話を続けるためだけのものではない。
この技術は現在、グーグルの検索エンジンが検索結果の中から質問の直接の答えになると思われるものを目立たせるのに役立てられている。以前なら、「エステティシャンは立ち仕事が多い?」といった質問を入力しても、グーグルの検索エンジンにはその意味が理解できなかった。だが現在のグーグルは質問に正しく反応し、スキンケア業界に求められる身体的な負荷を説明する短い文章を示すようになっている。
保守的なグーグルを脅かす破壊的イノベーション
専門家の多くは、グーグルは現在の検索エンジンを抜本的に見直すのではなく、このように徐々に改善していくアプローチを続けるとみている。
「グーグル検索はかなり保守的だ」。マイクロソフトとグーグルのAI研究者として倫理的AIチームの立ち上げに協力し、現在はAIスタートアップ企業ハギング・フェイスに所属するマーガレット・ミッチェルは、「グーグルはうまく機能しているシステムを台無しにしてしまわないようにしている」と言う。
ヴェクタラや検索エンジンを手掛けるニーヴァといったほかの企業も、同様の方法で検索技術の強化を進めている。しかし、オープンAIなどがチャットボットを進化させ、ヘイトスピーチのような有害性や偏見の問題が解決されれば、現在の検索エンジンを現実に置き換える存在となるかもしれない。最初にそれを実現できた者が、勝者になる可能性があるということだ。
かつてグーグルで検索広告を含む広告部門のトップを務め、現在はニーヴァを経営するスリダール・ラマスワミはこう話す。「昨年は、グーグルの鉄壁の支配を崩すのは難しいと落胆していた。だが、現在のような技術的な(進化の)瞬間が、競争のチャンスを生み出してくれている」。
(執筆:Nico Grant記者、Cade Metz記者)
(C)2023 The New York Times
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