知らないと出遅れる「ChatGPT」台頭のインパクト AIの最前線を知り尽くす東大の松尾豊教授に聞く

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ChatGPTで「ChatGPTを使うと何ができるのでしょうか?」と質問したときの結果。箇条書きで5つの回答をしてくれた(編集部撮影)。

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公開からわずか5日間でユーザー数が100万人を突破ーー。2022年11月にAI(人工知能)ベンチャーであるOpenAI(以下、オープンAI)が公開した自動会話ができる「ChatGPT」はその精度の高さから注目を集め、爆発的な広がりを見せている。
すでにオープンAIに投資を行いパートナーシップを結ぶマイクロソフトは1月23日、今後複数年にわたり数十億円ドルの投資を行うと発表した。ChatGPTの出現で、グーグルの経営陣は社内に「厳戒警報」を出したといわれており、ビックテックのAI競争も活発になりつつある。
足元の変化をどう見るべきなのか。AI研究の第一人者で日本ディープラーニング協会の理事長も務める東京大学大学院の松尾豊教授に聞くと、この大きな変化に「日本はピンときていない」と警鐘を鳴らした。

――ChatGPTのどのような点が優れていると言えますか。

大規模言語モデルの「GPT-3(Generative pre-traind transformer 3 以下GPT-3)」が2020年に出たときから、このような会話ができそうだというのはわかっていました。実際、その精度の高さ・対応範囲の広さからあっという間に多くの人がChatGPTを使い出していますよね。

ChatGPTは(機械学習の一種である)強化学習を非常にうまく使っています。そして、返答としては正しくはないけれどそれっぽい内容を返すことが従来のAIにはできなかった。そうした対話もできるという意味では、創造性があるともいえます。

――これまでAIが理解しなかったときの対応とはどんなレベルだったのでしょうか?

「わかりません」という答えか、話の通じない答えが返ってきます。SiriとかAmazonエコーは、長く会話することは難しいですよね。

今までの対話エンジンは、返答がつまらないし、こちらが言っていることをわかってもらえない。定型的なこと以外も言いますが、結局意味が全然通じないので、あっという間に飽きる。それと比べるとChatGPTのレベルはものすごく高い。

ホワイトカラーのすべての人たちに影響する技術

1975年香川県生まれ。1997年 東京大学工学部電子情報工学科卒業。2002年 同大学院博士課程修了。博士(工学)。産業技術総合研究所研究員、スタンフォード大学客員研究員などを経て、2014年より、東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻 特任准教授。2019年より、東京大学大学院工学系研究科 人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授。(写真提供:東京大学松尾研究室)

――日本ディープラーニング協会理事長として松尾豊さんが今年の初めに出した年頭挨拶の中でGPTの技術に触れ「大きな産業上の可能性がある」と言及しました。

インターネットが出てきたときと同じで、GPTですべてできるわけじゃないですが、そうとう変わるでしょう。変化の幅がものすごく大きい。

――具体的にどんな広がりが?

これまで機械では不可能だったことが次々とできるようになります。

たとえば、言葉を使った仕事。今のこうした取材もChatGPTが質問をしているかもしれない。なぜなら、相手が言っていることを聞き取って、次に「こうですね?」と聞くやり取りなので。

今のChatGPTは会話をするために強化学習をしており、相手に変なことを言わなければOKとなるように設計されています。これを、質問をして相手からさまざまなことを聞き出すとOKとなるように強化学習すれば、そうしたやり取りをするようになるわけです。

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