過去30年にわたり、ネットスケープのウェブブラウザ、グーグルの検索エンジン、アップルのiPhone(アイフォーン)といった一握りの製品がテック業界をまさにひっくり返し、それまでの製品を時代遅れのどんくさい恐竜のような存在に変えてきた。
そして昨年11月、実験的なチャットボット「チャットGPT」がテック業界の次の大きな破壊者に名乗り出た。このチャットボットは、インターネットリンクの単なる羅列ではなく、明確かつシンプルな文章で情報を提供することができる。人間に理解しやすい形で概念を説明することもでき、ビジネス戦略、クリスマスプレゼントの提案、ブログのネタ、休暇の計画といったアイデアをゼロから生み出すことさえ可能だ。
グーグルに鳴り響く「厳戒警報」
チャットGPTにはなお改善の余地が多いものの、そのリリースを受けてグーグルの経営陣は「厳戒警報」を発することになった。グーグルにとってこれは、火災報知器のスイッチを押すような事態だったわけだ。
グーグルにはシリコンバレーの大企業たちが恐れる瞬間、すなわちビジネスを根底から覆しかねない巨大な技術革新の到来が近づいているのではないか、と危惧する声が上がるようになっている。
グーグルの検索エンジンは20年以上にわたり、世界中でインターネットの第1のゲートウェイ(入り口)となってきた。ところが、従来の検索エンジンを再発明する、あるいはそれに取って代わろうとする新種のチャットボット技術が登場したことで、グーグルは収益柱である検索ビジネスに対する深刻な脅威に初めて直面する可能性が出てきた。グーグルのある幹部は、ここでの取り組みがグーグルの社運を左右すると述べている。