何でも「途中で挫折する人」に欠けた決定的な知識 自分自身を動かす「モチベーションサイエンス」
企業なら組織目標を掲げて、社員の勤労意欲をかきたてようとする。教師なら、生徒の学習状況についてコメントをすることで、いっそう勉強に励むよう促す。
医師や看護師なら、患者が医療アドバイスをきちんと守るような声かけをする。環境問題を考えるエネルギー会社なら、たとえば電力消費を抑える事例について情報共有をして、利用者に節電への意欲を抱かせる。
対象が生徒でも、同僚でも、顧客でも、市民でも、とにかく他者を動機づけするプロセスとして、モチベーションサイエンスという学問は有意義な理論を広めている。
だが、モチベーションサイエンスの使い道はそれだけではない。この理論は、自分自身を動かすことにも利用できるのだ。
自分ではなくシチュエーションを変える
置かれた状況を調整すれば、その状況で起きる自分の行動を変えられる。
たとえば、空腹のときに視界に入るものをすべて食べ尽くさずにいられないのだとしたら、食生活を改善する方法として、冷蔵庫を新鮮なフルーツや野菜で満たしておくのが有効かもしれない。
または、健康的な食生活をしたいと家族に宣言し、ドーナツに手を伸ばしたら家族に苦しい釈明をせねばならない状況にしておく。
あるいは、クリームたっぷりのドーナツの認識を「おいしいもの」から「体に悪いもの」に切り替える。
これらはばらばらの作戦のように見えるが1つ共通点がある。自分を変えるのではなくシチュエーションのほうを変えているという点だ。
冷蔵庫を野菜でいっぱいにすることで、何かつまみたいと思ったときの選択肢を変える。食生活を改善したいと家族に伝えておくことで、行動の言い訳をする相手を変える。「ドーナツは体に悪い」と認識することで、やわらかい揚げ菓子のイメージを変える。
他人から動機づけをされるのではなく、自分の欲望や希望を自分で舵取りしていくために、モチベーションサイエンスをどう活用できるか。それが本書のテーマだ。
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