何でも「途中で挫折する人」に欠けた決定的な知識 自分自身を動かす「モチベーションサイエンス」

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行動の変化を導くためには、欠かせない基本要素が4つある。

第1に、目標を選ぶこと。恋人を見つけたい場合でも、逆立ちに挑戦する場合でも、ベテランでも初心者でも、まずは目指す方向を決めることから始めなくてはならない。

第2に、現状から目標到達まで、モチベーションを維持すること。パフォーマンスに対する肯定的・否定的フィードバックの両方を求め、ここまでに積み上げた実績と、ここから対応すべき積み残しの課題を把握し、進捗状況をつねにチェックする必要がある。

そして第3に、複数の目標を同時にさばく方法も学ばなくてはならない。ほかの目標やほかの願望が入ってきて、正反対の方向に引っ張られることもあるだろう。整理して優先順位を設定し、適切なバランスをとっていく。

最後に第4の要素として、周囲のサポートをうまく利用することも考えておきたい。1人で目標を達成するのは難しいし、邪魔が入ればいっそう道は険しくなる。逆に言えば、周囲の人々に背中を押してもらえるなら、道のりはぐっと楽になるはずだ。

目標実現に必要な要素とは?

こうした基本要素が必要だと理解するのが、まずは第1歩。次に、自分の目標実現に向けてどの要素が欠けているのか特定する。

コショウをかけるべき料理に塩をかけても意味がないように、すでに支援があるのに周囲の支援を求めてもモチベーションは高まらない。

目標に対する思い入れの薄さが原因なのだとしたら、内発的なモチベーションがわきあがるような取り組み方を探す必要がある。

問題や課題は人によってさまざまなので、たった1つの戦略で何もかも解決するわけではない。

本書では、あなた自身が自分の道をデザインし、状況にふさわしい戦略を選べるようになることを期待している。

モチベーションサイエンスの原理を、あなたが、あなた自身に対して活用してみよう。頭の中にある「ゴールシステム(目標体系)」を理解し、目標の違いによってアプローチも違ってくることを学び、つまずきやすいポイントやタイミングも把握しよう。

(翻訳:上原裕美子)

アイエレット・フィッシュバック 心理学者/シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネス教授

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Ayelet Fishbach

シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの受賞歴のある心理学者で、モチベーションサイエンス学会の元会長。100以上の科学論文を多くの心理学やビジネスの学会誌に発表している。人間のモチベーションについての革新的な研究により、実験社会心理学会の最高論文賞や、キャリア・トラジェクトリー・アワード、フルブライト教育基金賞などを受賞。フィッシュバック博士の科学的な発見は、『ニューヨーク・タイムズ』や『ウォールストリート・ジャーナル』、CNN、NPRなどのメディアで頻繁に取り上げられている。

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